ロシア非難決議への賛同国数が「激減」する…ここへきて「ウクライナ」の求心力が「急低下」している「3つのワケ」
反欧米陣営の求心力
欧米諸国の威信が低下している一方で、反欧米諸国の陣営が、顕著な存在感を見せている。これはウクライナにとって大きな不安材料のはずだ。残念ながら、そのウクライナの不安感は、今のところ裏目に出ているように見える。シンガポールで開催されたシャングリラ会議に現れたゼレンスキー大統領は、公然と中国を名指しで批判した。中国のロシア支援と、平和サミット出席予定国に対する妨害を、非難したのであった。しかもゼレンスキー大統領は、シャングリラ会議後に、顕著に反中国の姿勢をとるようになっているフィリピンだけをあえて訪問した。 自国を支援していない、という理由で、人口4千万人のウクライナの大統領が、超大国・中国に敵対的な姿勢をとる光景は、狙いとは逆の効果を放つ恐れがある。東南アジアで人口・経済規模で1位なのは、インドネシアだ。当時G20の議長国であったインドネシアのジョコ大統領は、22年6月にキーウを訪問してくれた人物である。そのおかげもあってゼレンスキー大統領は、G20で演説をして、「平和の公式」を発表することができた。ところがゼレンスキー大統領には、ASEANの雄であるインドネシアに気遣いをしている様子が全くない。インドネシアは、「平和サミット」に形式的に参加したが、共同宣言に署名しなかった。 ASEAN第二位の経済力を持つタイも、同じように会議に形式参加しただけで、署名はしなかった。そのタイに続いて、ASEAN原加盟国の一つであるマレーシアが、BRICSへの参加申請を行った、という報道が流れている。ゼレンスキー大統領の反中国・親米国重視の姿勢は、ASEANの分断の構図にそったものであり、結果的に反対側のBRICS陣営の充実の流れにも強めてしまっている。 BRICSで圧倒的な存在感を見せる中国は、ロシア寄りの姿勢を明確にとり始めている。BRICS陣営の第二の大国であるインドも、長年の紐帯を持つBRICSの盟友ロシアと従来からの関係を維持し続けている。他のBRICS原構成国であるブラジルや南アフリカの立ち位置も同じようなものだ。これが昨年末のBRICS加盟国の拡大と、今年以降に予測されるさらなる拡大と、どう結びついてくるのかは、まだ予断を許さないところがある。ただ、BRICS諸国に勢いがあることは、事実だ。しかも金融制裁を乱発するアメリカなどに不満が大きく、明確に反欧米的な姿勢を取り始めている。 ケニアのルト大統領が、「平和サミット」において、あえてアメリカなどによるロシアの資産の没収を批判したことには、理由があるだろう。東アフリカにおけるケニアのライバル的な存在であるエチオピアは、昨年にUAE、サウジアラビア、イラン、エジプトという中東四か国とともに、BRICS入りを果たしてしまった。エチオピアは、UAEを中心とする中東諸国と太い結びつきを持つ。ケニアは、BRICSの動きを気にせざるを得ない。そのBRICSは現在、ドル基軸通貨体制を前提としている国際的な金融貿易慣行を刷新するための努力を本格化させようとしている。当面の焦点は、BRICSが切り崩そうとしている中東におけるドル決済の行方だ。ドル基軸体制の趨勢に影響を与えかねない欧米諸国による一方的な他国のドル建て資産の凍結・没収の問題は、ケニアにとっては、ウクライナだけの話として済ませられるものではない。