若いエキストラに「どこかで誰かが絶対見てるよ」 西田敏行さんの“共演者をとりこにする”素顔を盟友らが証言
55歳で生死の境をさまよったことが転機に
この20年余り、西田さんの体調は決して万全ではなかった。自著『役者人生、泣き笑い』(河出書房新社)の中で、2003年3月、55歳の時に心筋梗塞で倒れて生死の境をさまよったことが〈大きな転機になった〉と振り返っている。この時は一命をとりとめたものの、16年には自宅のベッドから転落して頸椎亜脱臼と診断され手術することに。その直後、胆嚢炎を発症し、胆嚢摘出手術を受けている。 19年には約19年にわたって「局長」を務めたABCテレビ「探偵! ナイトスクープ」を降板。ここ数年はドラマなどに出演した際も車いすを使用する役や、座ったままのシーンがほとんどだった。8日の「ドクターX」の完成報告会見でもやはり、座ったままで共演者たちとやりとりしていた。それでも妻の寿子(としこ)さんや二人の娘に支えられ、まだまだ仕事を続けるだろうと期待されていた中での、突然の死。役者として、まさに「生涯現役」を貫いたといえよう。
「全てが西田敏行色に」
「西田さんは活躍している期間が長過ぎて、彼の代表作を聞かれても、おそらくみんな答えはバラバラになるのではないでしょうか」 と、コラムニストの吉田潮氏は話す。 「やっぱり私は初期の当たり役『池中玄太80キロ』や、猪八戒役の『西遊記』がまず浮かんでしまいますが、若い人だと『ドクターX』を挙げる人も多いかもしれません。10人に聞いたら10人が違う作品を挙げるほどみんなの記憶に残っている。まさしく国民的俳優だと思います」 映画評論家の北川れい子氏はこう語る。 「彼の演じた役を見ると、全てが西田敏行色に染まっている気がします。正直、映画ファンには、わざわざ美形とはいえない人が悩んだりする姿を見たくない、という人も多い。彼はそんな美醜の枠を超え、西田敏行というキャラクターそのものに際立ったものがありました。彼が国民的人気を得たのは『釣りバカ日誌』シリーズですが、他にもあれだけ多様な作品に出続けていたことは本当にすごいです」 数々のドラマや映画が製作される裏で、西田さんはどのような素顔を見せていたのか。間近に接した人たちの証言を重ね合わせることにより、西田敏行さんの「役者一代記」を描いてみたい。