野生のクマを撃ち倒し食肉に? アラスカ出身の夫とその家族のワイルドな姿を描くハートフルエッセイ【書評】
皆さんはアラスカについてどんなイメージを抱いているだろうか。恥ずかしながら私は「寒い地域」という程度のイメージしか持ち合わせていなかった。 【漫画】本編を読む
ざわじまれなさんが描く『アラスカワイルドファミリー』(KADOKAWA)はアラスカ出身の夫・トマさんとその家族の様子を通じてアラスカの魅力を4コマ形式でコミカルに描いたタイトル通りのワイルドな義家族が続々と登場するエッセイ漫画である。 アラスカの地理や文化について詳しく書かれた解説ページも充実しており、海外に興味のある人にもおすすめできる作品だ。 アラスカの文化や性格的な部分は日本と大きな違いがあるのだろうか、と思いながら読み始めてみたが、序盤からトマさんの故郷・アラスカに帰省し出迎えてくれたトマさんの母が「孫の顔が見たい」という日本でもよく聞く言葉を口にしていたり、トマさんの弟が日本の大人気ゲーム『ポケットモンスター』をプレイする様子を見て、一気にアラスカを身近に感じられた。 勿論、ワイルドさを感じるエピソードも満載である。トマさんのお父さん(元軍人)がキャンプ中に遭遇したクマを撃ち倒し食用肉として保存するといった体験談に加え、気性の荒い性質がある子連れムース(ヘラジカ)との遭遇、街で起こったヒヤリとする出来事なども余すことなく描かれている。もはやアラスカという土地そのものがワイルドな性質と言えるのかもしれない。 また個人的には初のアラスカ帰省後にコロナ禍に突入し、その後3年半ぶりに帰省してざわじまさんが義家族との絆をさらに深めていったエピソードが印象深い。ざわじまさんがアラスカへ義家族に会いに行こうと決意し家族の愛と信頼を受け取る姿は我々読者の心も温かくしてくれると共に一歩踏み出す勇気を与えてくれるのだ。 本作を通じ、どんなに小さなことでも行動することの大切さや人との関わりを持つ素晴らしさを感じ取って欲しい。 文=ネゴト / 花