大勢決した自民総裁選 注目集まる「その先」
絶対優位の菅氏の不安材料は?
菅氏に不安材料はないのか。総理大臣となれば、これまでの官房長官の役割より幅広い分野での政策的な知見や強いリーダーシップが求められる。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は政策面、とりわけ外交と安全保障面での不安を挙げる 「菅さんは『ふるさと納税』を導入したり、『GoToキャンペーン』を主導したりするなど地方活性化には長けていますが、外交や安全保障は安倍首相らに任せており、明るいとはいえません。(今秋に)大統領選が行われるアメリカと今後どう付き合っていくのか、安全保障をどうするのか、冷え込んだ日中関係をどう立て直すのか、このあたりの手腕は未知数です」 菅氏の答弁能力に不安があると指摘するのは、麻生派のベテラン議員だ。 「菅さんは分野によっては、まともに答弁しないことがある。委員会でも『おれの答弁の機会を極力減らせ』と事前に指示してくることも多い。総理になれば、野党からの厳しい質問を一日中受けて、答えなければいけません。曖昧な回答をすると国民も失望してしまう。菅さんにとって悩みの種でしょう」 もっとも大きな不安は、派閥の支援を受けていることと指摘する評論家も多い。 今回、党内の最大派閥の細田派をはじめ、麻生派、竹下派、二階派、石原派の5派閥が菅氏を支援している。総裁選後に多くのポストを得るべく、派閥間の主導権争いも過熱している。 菅氏は2日の出馬会見で、「私は派閥の連合で推されて、ここにいるわけではない」と派閥の影響力を否定したが、仮に総裁選に勝利して首相になった場合、自身のやりたいように組閣や党人事を行い、政権運営をしていけるのか。 前出の鈴木氏は「派閥の領袖たちは百戦錬磨。総裁選後はさまざまな要望を出してくるし、菅氏は手を焼く」と指摘。それゆえ菅氏は首相になった後に、すぐに解散・総選挙に踏み切るとみている。 「菅さんはすでに、内閣の顔触れを考えていると思います。総裁選に勝利し、総理大臣になったら、その人事を断行してすぐに解散・総選挙をする。選挙に勝てば、国民の支持を得たということで、その内閣で自由に政権運営ができる。派閥の領袖たちもなかなか口を挟めない。この流れを狙っていると思います」