ECBは成長予測下方修正か、消費低迷が10月も利下げの可能性高める
(ブルームバーグ): ユーロ圏の消費者はなかなか、財布のひもを緩めようとしない。そのため、消費者が先陣を切るはずだった景気回復が実現するのかどうかを疑問視する声が上がっている。
20カ国から成るユーロ圏の成長は今年前半は好調だったが、現在は足踏み状態にある。製造業は低迷を続け、消費はその落ち込みを埋めず、センチメントは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準を下回っている。
インフレ率が2%に近づく中、欧州中央銀行(ECB)の一部当局者は景気低迷が今週の利下げのもう一つの理由だと考えている。この低迷が2025年まで続き、インフレ率が目標水準を割り込むようであれば、さらに劇的な金融緩和が必要になるかもしれないと投資家やアナリストはみている。
HSBCの欧州担当チーフエコノミスト、サイモン・ウェルズ氏は「成長鈍化は最近、ECBにとってインフレ以上の懸念材料になっているようだ。消費低迷は当局者をよりハト派的な方向に押しやる可能性がある」と話した。
理論的には消費回復の材料はそろっている。インフレ率はピーク時の10.6%から2.2%に低下し、失業率は過去最低を記録、所得は物価よりも急速に上昇しており、借り入れコスト低下により住宅ローンは安くなっている。
ラトビア中銀のカザークス総裁は先週「重要なのは、インフレ率が大幅に低下し、金利が引き下げられ始めたことだ」とし「国民にとって非常に良いことだ。購買力が高まり始めている」と語った。
しかし、こうした好条件やドイツでのサッカー欧州選手権とフランスでの夏季五輪という2つの追い風にもかかわらず、消費は低迷している。欧州連合(EU)統計局の6日の発表によると、4-6月(第2四半期)の家計消費は0.1%減少した。
ユーロ圏最大の経済大国であるドイツでは、レイオフや企業の倒産が相次ぐ中、家計の信頼感が低下している。フォルクスワーゲンは先週、87年の歴史で初めて国内工場を閉鎖する可能性があると発表し、新たな打撃を与えた。