個人向け部門好調…主要証券10社の4-6月期、6社が当期増益の要因
証券大手・準大手10社の2024年4―6月期連結決算は6社の当期利益が前年同期比増益となった。株式相場は上値が重かったものの、運用資産の積み上げに伴う手数料収益の増加により、個人向け部門が好調だった。企業活動の活発化で投資銀行部門も伸びた。足元では株価や経済の先行きが見通しづらい中、顧客対応でどれだけ差別化できるかが今後の成長を左右する。一方、ネット証券は日本株の売買手数料無料化の影響で対面証券に比べ利益の伸びが小さく、顧客をどう囲い込むかなどが今後の焦点となる。 【一覧表】証券10社の業績詳細 大手対面証券5社の個人向け部門の収益は全社が約10―20%伸びた。野村ホールディングス(HD)のウェルス・マネジメント部門では、投信や投資一任などの資産残高の積み上げで発生する収入が過去最高を更新。前年同期からの伸びは、株や投信の売買に伴う収入の伸びを上回った。野村HDの北村巧・執行役財務統括責任者(CFO)は「中長期的な『貯蓄から投資へ』の波が来たとみている」と説明。大和証券グループ本社の吉田光太郎・常務執行役CFOも「日本株取引は少し減少したが資産への助言のニーズは非常に高かった」と話した。 一方で「顧客の期待や目線は高くなっており、業績としては堅調だが課題も多い」(SMBC日興証券の後藤歩常務執行役員)。同社では顧客の運用資産がどの程度のリスクを抱えているか分析をする管理システムのリスクシナリオの内容をこのほど拡充した。顧客の期待に沿った提案で、資産管理型ビジネスの強化につなげる。 顧客ポートフォリオ強化につながるオルタナティブ(代替)資産商品の多様化にも各社は力を入れる。このうち大型不動産などに個人が比較的少額から投資できるセキュリティー・トークンは野村HDや大和証券グループのほか、SBIホールディングス傘下のSBI証券も注力する。日本株の売買手数料の無料化などの影響でネット証券の利益の伸びが対面証券大手に比べ小幅にとどまる中、好調な未公開資産に関連する商品を拡充し、富裕層向けの販売を伸ばす。 対面証券ではホールセール(法人向け)事業の利益をどう拡大するかも成長のカギを握る。4―6月期は資金調達などに関わる投資銀行業務が上向いたほか、日銀による利上げを意識した企業の資金調達の活発化で社債の引き受けによる収益も伸びた。野村HDの北村CEOは自社のホールセール部門について「若干増益だが課題はまだある」として経費率が91%と高止まりしている点を挙げ、「収入を伸ばし、費用を下げることで経費率を引き下げたい」と話している。