あご下の脂肪吸引で死にかけた34歳女性が語る恐怖体験、事故る美容医療が浮き彫りにする「自己責任」の限界
(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星良孝) 美容医療と言われたときに、どのようなイメージが思い浮かぶだろうか。 【リアル写真】瀬戸麻希さんが経験した脂肪吸引後の合併症。首の下に血腫が発生しており、とても痛々しい。 2024年であれば、「健康被害」「詐欺まがいの契約」「倫理観の欠如」などのネガティブワードが出てくるかもしれない。 筆者はヒフコNEWS編集長として美容医療の取材を続けているが、確かに問題の多い一年だった。そうした状況も踏まえつつ、ここでは、2025年を展望する立場から、美容医療の問題について考察する。 さまざまな問題があるのだが、今回は健康被害に焦点を当てる。筆者は脂肪吸引で命の危機を経験した女性を取材したので、その証言を紹介しながら、健康被害の問題がどういうものかを考えつつ、2025年の動きについて述べていく。 ■ 脂肪吸引であごの下に「血腫」が発生 この12月に会ったのが34歳の瀬戸麻希さん。瀬戸さんは「中卒弁理士」と自ら名乗り、SNSで情報発信していた人だ。文字通り中卒の弁理士として、その投稿は世間の関心を集めていた。筆者もどのタイミングかは分からないが、SNSで見かけ、フォローしていた。 この11月に、そんな瀬戸さんが美容医療で合併症を経験したことをSNSで投稿しているのを知った。これは大変なことだと思い取材を申し込んだところ、快く応じていただいたので、新大阪でお会いした。 瀬戸さんが最初に投稿した写真は次のようなものだった。あご下に血腫が発生している。簡単に言うと皮膚の下に血だまりができたのだ。
■ 瀬戸さんのあご下はどんな状況になっていたのか(写真あり) ◎顎下脂肪吸引、即日施術の当日に発生した血腫悪化のトラブル、「最初は副作用か区別が付かなかった」、「中卒弁理士」として活動する30代女性が経験した危険 Vol.1(ヒフコNEWS) ◎あご下の脂肪吸引のリスク、死亡事故にもつながる「血腫」 なぜ窒息を起こすのか? ブラジルの医師らの報告(ヒフコNEWS) 筆者は以前に、あごの下の脂肪吸引を受け、首の血腫で命の危機に瀕したというケースが論文報告されていたのを見ていた。その時の写真は次のようなものだった。瀬戸さんがSNSで投稿していた写真と状態が似ている。 瀬戸さんの状態は同様の合併症と判断できたため、何が起こったのかをすぐに理解できた。典型的なあご下の脂肪吸引によって死亡事故に至る可能性があるケースだ。 実は、2023年春、同じ脂肪吸引に伴う血腫の合併症によって九州在住の男性が死亡している。大阪であごの下の脂肪吸引を受け、皮下出血を起こし、血液がたまり、気道が圧迫されて呼吸困難を引き起こしたのだ。 こうした合併症の発生を防ぐことは重要だ。美容医療にどのような課題があるのかを考えるため、瀬戸さんには具体的に何が起こったのかを詳しく聞いた。