あご下の脂肪吸引で死にかけた34歳女性が語る恐怖体験、事故る美容医療が浮き彫りにする「自己責任」の限界
■ 事故る美容整形になり得る3つの課題 瀬戸さんに会ったのは12月11日で、合併症発生から2週間余りが経過し、あごの周りの血腫は消退していた。 「見た目は改善しましたが、まだあごの周りがたんこぶのようになっていて、口もうまく開けられないんですよ」と瀬戸さんは最初に話した。確かにあごの下からほおにかけて腫れ上がった状態に見える。 そもそも瀬戸さんが美容医療を利用し始めたのはここ2年ほどのことだ。顔をリフトアップする糸リフト、下まぶたのたるみを解消する手術、小鼻の整形、注射を使った施術を受けていた。 これまでの美容医療には満足していた。今回の合併症を起こす数カ月前の写真を見ると、12月に顔が腫れた状態と比べると、印象が全く異なっている。確かに、合併症によって顔が大きく腫れたのだ。 それが美容医療の合併症で見た目が好ましくない形になったのはつらいことだろう。瀬戸さんは「誰にでも起こり得ること。これをきっかけに、リスクへの理解や緊急時の体制整備が進むことを願っている」と詳細を話してくれた。 瀬戸さんの話から、合併症の発生、あるいは悪化を防ぐという面から見て、以下の3つの課題が考えられる。 ・契約から即日施術 ・副作用の判断の難しさ ・緊急連絡先がない 順に見ていく。
■ 「即日」「判断困難」「連絡先不明」の問題とは 瀬戸さんは11月23日に大阪のクリニックを訪れ、脂肪吸引を受けた。あご下の脂肪吸引を受けることを希望し、契約した。カウンセリングを受けて、そのまま手術を受けるという手順となっていた。 瀬戸さんの場合、美容医療を受け慣れており、希望も明確で、本人も即日施術を問題視していない。 しかし一方で、瀬戸さんとは異なり美容医療に慣れない人が、漠然と美容医療を検討することもある。その人が即日施術となり、瀬戸さんのような合併症が万が一起きた場合、その後の対処が困難になった可能性があると筆者は考える。 それは副作用の判断が難しいということが主な理由だ。これは瀬戸さんもそうだった。 11月23日、手術は午後3時から始まって2、3時間で完了した。帰宅後、午後8時くらいから首の周囲が腫れ始めたが、瀬戸さんは軽い副作用かどうか判別できなかったと振り返る。4歳の子は無邪気に「ママ太り過ぎじゃない」などと言っていたというが、実際には命の危険が迫る深刻な状況だった。 「これは副作用なのかな? と思ってしまうんです。結局、私は呼吸が苦しくなって初めてこれはもう異常事態だと判断しましたが、その境目が素人には分かりづらい。通常の副作用なのか、それとも危険な状態なのか、その線引きが難しいです」(瀬戸さん) 瀬戸さんは最終的に午後2時に救急車を呼ぶことになったが、施術したクリニックは緊急連絡先を設置していなかったという。電話の連絡も付かない状態だった。 本人が副作用かどうか判断するのが難しく、しかも連絡先も不明である状況で、仮に美容医療の経験があまりない人であれば、対応が遅れる恐れは強まる。瀬戸さんは、息苦しくなったことから救急車を呼んだ。 もしかすると緊急の連絡先があったのかもしれないが、施術を受けた本人が探し出せないのであれば意味がない。 先に3点の課題を書いたが、これらは改善できるものだ。 例えば、即日施術ではなく、事前に受けられる医療に関する説明や、合併症が起きた場合の説明を詳しく受けることはできるだろう。説明を受けた後、施術を受けるための心の準備をするために時間をおくことも重要だ。緊急対応が必要な副作用に関する情報提供は欠かせない。緊急連絡先も必要だ。