DV被害の妻が息子の不登校で目覚めた新たな道 母親が精神的自立を果たして子どもが変わった
そんな家に居続けなければならないのでしょうか。私は、「実家のご両親の力を借りられませんか?」と聞きました。 「1カ月ほど実家に身を寄せましたが、私の親も、『子どもを置いたまま出てきたらダメじゃない。あなたの対応にも問題があるんじゃない? ちゃんと話し合いなさい』って。どこにも居場所がなかったですね」 自分の親にも見放され、孤立無援の美香子さん。この頃が美香子さんにとって八方塞がりのような、いちばん辛い時期だったと思います。
■「これからは自分のことを考えよう」 そんな苦しい数年を経たある日、また出来事が起こります。 「ずっと私が家計を管理していたんですが、ある日、主人から『通帳とカードを返せ』と言われました。これからは自分が管理するからと。がんばって借金を返して、これからやっと蓄えられると思っていたので、悔しくて悲しくて……」 家を飛び出した美香子さん。行く場所もなく、時々遊びに行っては話を聞いてもらっていた知人のところに駆け込みました。
「どうにもならない思いを知人に伝えると『おつかれさま。あなたの役割が今日終わったね』って言ってくれたんです」 「『3人の子どもが大きくなるまでは、あなたがお金を管理する必要があったんだよ。でも、その役割が今日で終わった。よくがんばったね。元気な男の子3人が育ったね』って。それを聞いて、私、これまでとは違う涙が出てきて。ああ、これからは自分のことを考えていいんだって」 その頃、16歳になっていた三男さんは、美香子さんの体調不良のときには家事を手伝い、落ち込んでいると笑わせて元気づけようとしたり、自分もがんばらなきゃとドリルを買って勉強をしたり、学校には行けないものの美香子さんを心身ともに支える存在と成長されていました。
物事が動くときは目に見えない後押しがあるものです。美香子さんはある国家資格の情報に目が留まります。 「公認心理師の資格です。私はこれまで高齢者の相談員やケアマネジャーをしていて、人の話を聴いたり、相談にのったりしていました。その仕事をもっと深めて、今度は親子関係をサポートする側に回りたいと思ったんです」 自分のことを優先して考えるようになった美香子さん。家庭のことを大切に思いながらも、この資格の勉強に夢中になります。そんな様子を見た子どもたちは応援してくれるようになったそうです。