「ICEもEVも本気で取り組む」「CBブランドは残す!」ホンダ二輪事業本部長 加藤稔さんに聞く【TOPインタビュー】
加藤稔・本田技研工業二輪 パワープロダクツ事業本部 二輪事業本部長
コロナ禍によって起きたバイクバブルが終わり、国内では新車・中古車や用品の販売状況もコロナ前に戻ったいま、せっかく増えた新規ライダーを含む多くのライダーに、バイク業界側は何を提供しないといけないのか。誰もがバイクの楽しさを享受できる持続可能なバイクライフをこの先も継続するための考えを聞いていく。今回は、2024年4月にホンダの二輪事業を統括する本部長に就任した加藤さんに、今後のホンダの展望をお聞きした。折しも、2024年を電動二輪車グローバル展開元年と位置付け、新たな電動二輪車(以下EV)2機種を10月9日に発表し、さらに11月6日からイタリア・ミラノで開催されたEICMAでは内燃機関(internal combustion engine以下ICE)の新型エンジンを発表するなど、電動・ICEともに精力的な新規展開がスタートしている。責任者である加藤さんに、その背景などをお聞きした。 【画像】ホンダがEICMAで世界初公開したV型3気筒エンジン/新しいEVコンセプト
──【加藤 稔(かとうみのる)】1965年生まれ、京都府生まれ。1988年、本田技研工業入社、埼玉製作所狭山工場生産管理課に配属。1998年、国内二輪部・販売課に所属。2001年~2007年、タイ、インドネシア駐在。2007年~2010年、HMJで勤務。2011年~2020年、イギリス、ベトナム、インドに駐在。 2020年4月、執行職・ライフクリエーション営業本部長に就任。2022年4月、二輪・パワープロダクツ事業本部パワープロダクツ事業統括部長。2023年4月、二輪・パワープロダクツ事業本部二輪事業統括部長。2024年4月、執行役、二輪・パワープロダクツ事業本部長。
電動過給機の採用により、コンパクトで排気量以上のパフォーマンスを発揮するV型3気筒エンジン
2030年までに30モデル以上のEVを投入するとしているホンダにとって、その目標の10機種目と11機種目にあたるCUV e:とICON e:を10月にインドネシアで発表。いよいよEV化が本格的に加速する姿勢を見せたあとの11月のEICMAでは、ホンダらしさに満ち溢れた独創的な二輪車世界初の電動過給機付きV型3気筒エンジンのプロトタイプを初公開。EV、そしてICEの両方で意欲的なニューモデルを公開したホンダの今後の戦略について加藤さんにお聞きした。 「ホンダとしては、EVもICEもナンバー1であり続けたいという強い思いがあって、もちろんEVも本気でやりますが、ICEも同様です。あのV型3気筒は、電動過給機を装着することでコンパクトながら実際の排気量以上の大排気量に匹敵するパフォーマンスを発揮するとともに、燃費向上にも貢献してくれます。結果、環境にも優しいICEということで、お客さまにも『ワオ!』と言っていただけるような新たなチャレンジです。開発陣は若手が中心で、過去、ホンダにもライバルメーカーにもないものを目指しています」 V型3気筒と聞くと、MotoGPが4ストローク化された初年度に、ホンダが用意したRC211VのV型5気筒エンジンを想起してしまう。 「あのV5とは関係はありませんが、お客様に喜んでいただけるような、コンパクトでなおかついろいろな使い方ができそうな新しいICEを若い人中心にやってみようと。まだまだ開発中なので、詳しいことはお話しできませんし、ちょっと早すぎるかなと思いながらもEICMAでお見せしました」 確かに、大型スポーツモデル用という説明はあるが、排気量、スペックなどは一切公開されていない。 「そこは、まだ開発中ということでご勘弁ください」 ──EICMAで発表されたV型3気筒エンジンは、二輪車世界初の電動過給機付き。エンジン回転数にかかわらず、任意に過給をコントロールできるため低回転からレスポンスのいいトルク特性を実現。燃費の向上にも寄与するという。インタークーラーが不要の設計とすることでマスの集中化と軽量化にも貢献しているという。大型二輪車向けに開発中という以外、スペック等は一切公開されていないが、どんなバイクに搭載されるのか、いまからワクワクする。