カマラ・ハリスの素顔。堂々たる風格と「友達になりたい」と思わせる庶民性。ボブ・マーリーと料理好き【アメリカ大統領選】
◆「友達になりたい」と思わせる庶民性 その日、ステージに現れたハリスには堂々たる風格がありました。参加者が後で口々に語ったハリスの印象は、「明日から大統領になれる」という存在感です。 私は予備選の取材で20人の候補に会ったのですが、その中でもハリスの存在感はトップクラス。ヒラリーにもこの風格があったのですが、ハリスにはそれに加えて、「友達になりたい」と思わせる庶民性がありました。 一緒に取材していたマーケティング・ストラテジストである私の夫が「家族と仕事以外で、あなたが情熱を抱いていることは何ですか」と質問すると、ハリスは、即座に笑顔で「それは素晴らしい質問ですね」と答え、「家族と政治以外だと……私は料理が好きなんです」と母から料理を習い、日曜に大家族が集まって食事をする「団欒」を大切にしていることを楽しそうに語りました。 音楽が大好きで、ボブ・マーリーが特に好きだという話になると会場にいたマーリーのファンたちから拍手が起こり、和気あいあいとした雰囲気になりました。 講演が終わって、私がハリスの妹のマヤからキャンペーンについて話を聞いている時、ハリスが私の隣にいる夫のところにやってきて、ステージでの回答の続きを話し始めました。 テーマは「ボブ・マーリーの音楽」です。自分が好きなミュージシャンの話を情熱的に語るハリスは、まるで昔からの友人のような感じです。ステージに現れた時の風格と庶民性の組み合わせは、若い頃のビル・クリントンのカリスマ性に通じるところがあると感じました。
集会には子どもたちも来ていて、その中にはハリスに会うために3時間も待ち、講演をおとなしく聞いていた幼い姉弟や、銃規制を求めて活動する若い父親と小学生のお嬢さんもいました。彼らの多くが「女性に大統領になってもらいたい」と言い、ハリスに希望を抱いていました。 81歳のバイデンと78歳のトランプという「高齢の白人男性対決」にうんざりしていたミレニアル世代(1981~96年生まれ)やZ世代(96年以降生まれ)の若者たちにとって、マルチレイシャル(複数の人種・民族的背景を持つ人のこと)の女性候補というのはマイナスではなくプラス要素のようです。これは、ヒラリーの時とはまったく異なる反応です。 ハリスの両親はどちらも大学院生として渡米した移民で、ジャマイカ出身の父親は後にスタンフォード大学の経済学教授、インド出身の母親(故人)は乳がん専門の研究者になりました。彼らはハリスが幼い頃に離婚。シングルマザーに育てられたハリスと妹のマヤはどちらも弁護士の資格を取りました。 有名な弁護士事務所に勤務するほうが収入ははるかに高いのですが、社会活動家でもあった母の影響を受けたハリスは検察をキャリアに選びました。40歳で地方検事に。46歳の時に選挙で共和党の対立候補を僅差で破り、女性としても、黒人としても、インド系としても初めてのカリフォルニア州司法長官に就任したのです。 そして、トランプ大統領が誕生した2016年11月の選挙でカリフォルニア州選出の上院議員になりました。