2017年酉年:数千年に渡る歴史から辿るニワトリ家畜化の起源
ちなみにセキショクヤケイは、今日、インドやベトナム、インドネシア、そしてジャワ島などの森林やジャングルに生息している。ハイイロヤケイは現在インドの南部において確認されている(しかし以前はより広範囲に生息していた可能性が高いようだ)。そのためニワトリの家畜化の起源は、インドなど「アジア南部」か「東南アジア」という考えで、今のところ一致している。こうした一連のデータはニワトリの「単独起源説」も裏付けているようだ。(沖縄の軍鶏(シャモ)などは個別の起源だった可能性も指摘されている:Oka et al., 2007。) Oka, T., Ino, Y., Nomura, K., Kawashima, S., Kuwayama, T., Hanada, H., Amano, T., Takada, M., Takahata, N., Hayashi, Y. and Akishinonomiya, F. (2007) Analysis of mtDNA sequences shows Japanese native chickens have multiple origins. Animal Genetics, 38: 287-293. doi: 10.1111/j.1365-2052.2007.01604.x 家畜化は具体的にいつ頃はじまったのだろうか?ニワトリと思しき骨は世界各地から報告されているようだ。しかし以下、3つの条件を満たしたものが重要と考えられる。(1)遺跡などから発見されたもの(=野生のものでなく家畜化された可能性が高い)。(2)はっきりニワトリの骨と判定されたもの(Gullus属内において、現在4種が知られている。しかし骨だけでこうした野生種と家畜化された品種を識別するのは難しいケースが多い)。そして(3)最も古い記録だ(時代測定のはっきりしないケースも当然でてくる)。以上の3つの条件を満たしたものに、紀元前2400年頃(今から約4400年前)のインダス文明(現在のパキスタンに位置していた古代の巨大都市「モヘンジョ・ダロ」)から発見されたものがある(Crawfford1990参照)。 Crawford, R. D. (1990) Origin and history of poultry species, in: R.D. Crawford (Ed.), Poultry Breeding and Genetics, Elsevier, 1990, pp. 1-42. 中国北部から紀元前6000年前のチキンらしき骨の発見記録なども報告されている (West et al. 1988)。しかし中国北部は先述した野生種の生息地域からかなり離れている。そしてはっきり家畜化されていた証拠にもとぼしいようだ。もしかして(東南アジアなど)離れた場所から運送された可能性も捨てきれない。果たして真相はどうなのだろうか?(さらなる研究・発掘調査が期待される。) West, et al. (1988) ‘Did chickens go north? New evidence for domestication.’ J. of Archaeological Science 15: 515-533.