2017年酉年:数千年に渡る歴史から辿るニワトリ家畜化の起源
私はこうした問いに対する答えを今のところ持ち合わせていない。非常に限られた私の知識をもとに推測させていただくと、まず「ニワトリ家畜化の単独起源説」というアイデアは、改めて非常に興味深い。この初めて家畜化された「アダム&イヴ」チキンは、何か人類にとって特別な存在だったのかもしれない。そして我々は現在、この「スペシャル・ワン」の直接の子孫末裔を享受しているのかもしれない。 もう一つの可能性(仮説)として、最初に家畜化を行った人物(それとも特定のグループ?)が、何か画期的で斬新な手法を用いて、人類の歴史上、「最大の発見」を生み出したのかもしれない。その方法とは具体的に何だったのだろうか? セキショクヤケイとハイイロヤケイを交配させたことに、何か秘密が隠されているのだろうか? もう一つ(思いつくままに)仮説を述べさせていただくと、ニワトリを飼いならすための大量のエサの存在も無視できないような気がする。例えば、米など穀物の農耕は9000年くらい前に、東南アジア一帯で行われたという推定がなされている(Molina et al. 2011)。かなり大規模な農耕も行われていたようなので、ニワトリに分け与え飼育するくらいの蓄えはあったのかもしれない。時期的にニワトリの起源と大まかに重なっているが、これはただの偶然ではあるまい。 Jeanmaire Molina, et al. (2011) Molecular evidence for a single evolutionary origin of domesticated rice. PNAS 2011 108 (20): 8351-8356. doi:10.1073/pnas.1104686108 「鶏の家畜化の起源」は、今までこの連載で取り上げてきた何千万年や何億年前という地質年代よりは、はるかに最近のことなのだろう。化石記録に基づく古生物(Paleontology)というよりは、人類と関わりの深い考古学(Archaeology)の分野に入るはずだ。しかしその起源や現在に至る大量需要に至るプロセスは、何かしら生物進化に通ずるメッセージを受け取れるはずだ。(全くの筆者の興味半分だけでは当然ない)。さて新年も何度チキンと卵の恩恵を受けることか。