震災から13年…福島・浪江町の今とビッグプロジェクトの全貌
その「ウッドコア」にビッグプロジェクトが舞い込んだ。 来年開催予定の「大阪・関西万博」のシンボル「大屋根リング」に、「ウッドコア」の木材が使われるというのだ。 「大屋根リング」は1周約2キロで、高さは20メートル。完成すれば、世界最大級の木造建築物となる。相澤さんは、「福島県産を中心とした材料を使いながら、世界最大規模の木のリングを造る…今後、木造建築が普及していく中で、大きな起爆剤になればいい」と話す。
浪江町から車で約1時間、福島・田村市。この日、相澤さんは、真っすぐに伸びた立派な杉を求めてやって来た。「福島には非常にいい杉がある」。 森林面積が7割を占める福島県では、高度経済成長期に大量に植林された杉が切り時を迎えていた。この大量の杉を有効活用すれば、「大阪・関西万博」で世界に福島の復興をアピールできる。
2月9日。「ウッドコア」にあったのは、福島産の杉の丸太。伐採された丸太は、放射性物質が含まれていないか1本ずつチェックする。サイズを計って機械に入れると、均等サイズの板材に。特殊な接着を塗り、それを貼り合わせると一塊の角材になる。 これが「ウッドコア」が得意とする「大断面集成材」だ。「集成材は外側が強い材料。中は弱くてもいいという構成になっている。木材資源の有効活用の観点から、余すことなく使う」と相澤さん。
大断面集成材は、耐熱性・耐久性にも優れ、今や大型木造建築物には欠かせない木材。 「道の駅なみえ」の柱やJR山手線・高輪ゲートウェイ駅にも使われている。 その大断面集成材の生産能力で、日本最大クラスを誇る「ウッドコア」は、当初5人でスタートしたが、地元の人を中心に雇用し、約50人が働く会社に成長した。
「福島県の木材が万博で使われるのは、大変いいことだと思う。福島県の木材は全て安全なものなので、ぜひ日本全国で使ってもらいたい」と話すのは、浪江の復興に人一倍強い思いを持つ「ウッドコア」取締役の朝田さん。 実は、朝田さんは地元で110年続く老舗製材所・朝田木材の4代目でもある。 震災後は東京で避難生活を送っていたが、「どうしても浪江で働きたい」と家族を東京に残し、単身で故郷に戻ってきた。 現在は海岸防災林の苗木を保護する柵を作るなど復興関係の仕事を担い、地元の雇用創出に尽力してきた朝田さん。一方で多くの人がふるさと浪江に戻ってこないことに複雑な思いを抱いていた。 そんな中、朝田さんたち「ウッドコア」に、新たなチャンスが舞い込む――。