【田嶋陽子さん】「国力を上げるのは、女性の力」若い世代にエールを送る!
日本の国力を上げるのは、女性の力
――2024年11月のアメリカ大統領選では、女性として、またアジア系のルーツを持つ人物として初の大統領になる可能性があったカマラ・ハリス氏がドナルド・トランプ氏に敗れましたね。 田嶋さん:アメリカは急激なインフレで、生活苦を訴えている人たちがたくさんいます。「食うか食われるか」といった状況の中で、トランプのほうがこの苦しい状況を変えてくれると思った人が多かったのかもしれません。 ハリスは中絶の権利擁護を掲げて戦っていたけれども、「女性の人権の前に、まず、みんな食えることのほうが大事ではないだろうか」と感じていた人がアメリカにはたくさんいたのだろうと、思わされた結果でした。トランプのマッチョ言動や態度を、力強く感じた人が多くいたのかもしれません。 日本もどんどん経済が悪化してくると、みんな目先のことにばかりとらわれてしまって、女性差別の是正なんて二の次、三の次になってしまうかもしれない。でもそれじゃ、ダメなんですよ。女性が家に閉じ込められてしまっていたら、絶対に経済状況は改善しない。きちんと女性にも男性と同額の賃金を払って、その賃金で納税してもらう。 そうしたサイクルを作ることではじめて経済はよくなっていくと思います。女性をこんなにも無駄遣いしている国は、先進国では日本だけ。日本の国力を上げるのは、国民の半分を占める女性の力のフル活用だと、私はずっと言い続けています。 それに女性が活躍するためには、やっぱり女性の議員を増やさないといけません。こないだの選挙でやっと国会議員の女性の割合が15.7%になったけれど、それでも国際的に見たら非常に低い水準。女性差別を是正する法案を通すためにも、まずは女性議員を増やさないと。男性に政治を任せ続けたら、「選択的夫婦別姓」ですら、いつ実現できるのかわかったもんじゃありません。 声をあげ、連帯する。そして、女性議員を増やす。当たり前のことですが、日本はまだまだ実現できていないことが多すぎる。あなたたち世代で変えていってほしいです。頑張って! 田嶋陽子 1941年岡山県生まれ。静岡県で育つ。元法政大学教授。1991年に『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)に出演して注目を集め、その後はフェミニズム研究者として著書10数冊。またオピニオンリーダーとしてマスコミで活躍。還暦を過ぎてからは、シャンソン歌手、書アート作家としても活動。2023年、シニアハウスに入居したことが話題に。最新刊は『わたしリセット』(文春新書)。 撮影/上澤友香 取材・文/高田真莉絵
「わたしリセット」田嶋陽子 ¥1100(文春新書)