「近所のお店の人たち、みんな患者さんですよ」東京・新大久保、「多国籍な」街の歯科医
新大久保はさまざまな民族があまり干渉しあうこともなく、好きな方向を向いている街だ。そこが気ままで、生きやすいのだと思う。だけど、ともすれば分裂しかねない危うさをはらんでもいる。 そこになんとか芯を与えているのは、日本語や、日本の文化だ。新大久保の商売人や留学生たちが、国が違う者同士では日本語でコミュニケーションをしている姿をよく見る。彼らも日本の慣習の中で暮らしているのだ。日本という背骨がしっかりしてこその国際化であってほしいと思う。 「純ジャパ」恵美子さんはたぶん、「新宿歯科クリニック」の背骨なのだろうと思う。鴻一さんと恵美子さんが営み、多くの人々が今日も出入りするこの多国籍歯科は、新大久保の象徴のような場所かもしれない。
--- 室橋裕和(むろはし・ひろかず) 1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイ・バンコクに10年在住。帰国後はアジア専門の記者・編集者として活動。取材テーマは「アジアに生きる日本人、日本に生きるアジア人」。現在は日本最大の多国籍タウン、新大久保に暮らす。おもな著書は『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』(辰巳出版)、『日本の異国 在日外国人の知られざる日常』(晶文社)、『バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記』(イースト・プレス)、『おとなの青春旅行』(講談社現代新書、共編著)など。