メーキャップで健康寿命が延びる? 高齢者の心にキラキラをもたらす介護美容マジック
高齢化が進むなか、高齢者施設の入居者にメークやネイルをする「介護美容」が広がっている。介護の知識を身に付けた施術者が対応するため、施設職員や家族も安心して任せられると好評で、化粧をしながら会話を重ねることで入居者の心がほぐれ、コミュニケーション向上にも一役買っているようだ。 【写真】平松久実さんのメイクに「(背筋が)しゃんと伸びた」と喜ぶ女性 「お化粧なんて何年ぶりやろ。入所するのに化粧品は持ってこなかったからうれしいな」 住宅型有料老人ホーム「スイート美原」(堺市美原区)に入居する女性(83)が、鏡の前に並ぶ色とりどりの頰紅やアイシャドーなどに目を輝かせた。 同施設では週に1度、介護福祉士などの資格も持つ介護美容専門家、平松久実さん(31)による介護美容の出張サービスが人気だ。入居者へのメークやネイルだけでなく、健康体操や特別な資格が必要で施設職員では対応が難しい巻き爪のケアなども引き受けている。 化粧をしながら平松さんと交わす何げない会話に引き込まれ、最初は緊張で表情が硬かった女性も次第に笑顔に。見守っていたほかの入居者に「えらいべっぴんさんになったやん」と声をかけられ、「どこか出かけたい気分。気持ちがしゃんとなります」とほほ笑んだ。 平松さんが介護の現場に美容を取り入れたきっかけは、介護福祉士になるための実習で訪れた高齢者施設でのある女性との出会いだった。女性は認知症で、うまく眉を引けなくなったいらだちを周囲にぶつけるなどし、施設内でも孤立していた。状況を知った平松さんは女性やもめていた入居者らに声をかけメークの講習会を企画。「あなたのお化粧すてきね」など声をかけあうようになると、空気が和らいできたという。 入居者のストレス軽減や気力の充実に美容の効果は大きいと感じた一方、施設職員としての業務に忙殺され、「介護美容を専門にできる外部の力が必要」とも痛感。令和2年に開校した介護美容研究所大阪校の1期生として学び、介護美容の出張サービスを始めた。 現在は高齢者施設12施設と連携し、日々入居者への施術を行っている。