「ジェネリック薬」4割超に製造過程における不備が発覚 “品質のばらつき”“ずさんな管理体制”への問題が浮き彫りになってもシェアを伸ばす理由
先発薬と同一の効果が期待できるのに、3~7割ほどの価格で購入できるとされてきたジェネリック薬。その手軽さから、「ジェネリック薬をお出ししますね」という言葉にうなずく人も多いだろう。しかし、そんな「庶民の味方」の存在意義が大きく揺らぐ事態が発生した──。 【表で丸わかり】ジェネリック薬の原薬の製造国は中国が多い!輸入した原薬をそのまま使用するジェネリック薬メーカーの輸入国の割合を公開
製造過程における不備が明らかに
「82.75%」──10月末に厚生労働省が発表した、今年3月のジェネリック医薬品(後発医薬品)の数量ベースでの使用割合だ。 11月18日、日本製薬団体連合会(以下、日薬連)は、ジェネリック薬を製造する計172社が2024年4月から10月にかけて実施した、製造実態に関する自主点検の結果を報告し、日本の医療界に激震を与えた。全8734品目のうち、実に4割超にのぼる3796品目に「製造販売承認書」と製造実態に差異があったことが判明したのだ。 薬剤師の三上彰貴子さんが説明する。 「製造販売承認書とは、医薬品の製造方法や規格試験の手順が細かく記載された書類です。製薬会社は原則として厚労省から品目ごとに製造販売承認を取得する必要があり、これに従って薬を製造します。異なる製造法など承認書に違反すると薬機法や製造にかかわる省令(GMP)により改善や業務停止命令など処罰の対象になることがあります」 今回の点検では各社で次々に、薬に含まれる成分の名前の表記ミスや、品質試験に使用する装置の規格が承認書と異なっていたなど、製造過程における不備が明らかになった。 「いつかこんな事態が噴出する日が来ると思っていました。ジェネリック薬は、メーカーによって品質や効果にばらつきが大きく、さらに原材料の値上げや薬価の引き下げで、作れば作るほど赤字が膨らむ薬もあり、コストを下げるためのずさんな管理体制も目立つ。医療関係者の間では『やっぱり……』という声が上がっています」(医療ジャーナリスト)
ジェネリック薬を巡る不祥事
ジェネリック薬は、新薬の有効成分に関する「物質特許」期間が満了したのち、その成分をコピーすることが認められた、より廉価で発売される医薬品だ。先発薬と同じ有効成分を持つため、効果や効能が同一だとされている。 ジェネリック薬を巡っては、去る10月1日にも大きな改正があったばかりだ。ジェネリック薬があるにもかかわらず、先発薬の処方を希望した場合、患者が差額の4分の1を「特別料金」として追加で支払う制度が導入されたのだ。 「この制度の導入からもわかるように、厚労省としては、医療費削減のために安価なジェネリック薬の利用を推進したい。そのために安全性を周知すべく、大規模な点検を行ったのでしょう。ところが、フタを開けてみれば、4割超の製品が“クロ”だった。日薬連や厚労省からすれば、この結果は大きな誤算だったはずです。信頼を得るどころか、ここ数年相次いだ、ジェネリック薬を巡る不祥事を想起させる結果に終わりました」(銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さん) ジェネリック薬を巡る不祥事はこれまでに何件か明るみに出ている。たとえば2018年7月、降圧剤の「バルサルタン」の原料から発がん性物質が検出された。2020年12月には、「小林化工」が製造した水虫治療薬に睡眠導入剤の成分が混入していたという異例の事件が起こり、2023年4月には「沢井製薬」の品質試験において胃薬の中身をカプセルから取り出し、別のカプセルに詰め替えていたことが明らかとなった。 「今回の点検結果を受けてもなお、厚労省は『品質や安全性には問題がない』と見解を述べていますが、到底信じることはできない。患者さんに不安が広がっても無理はありません」(長澤さん)
【関連記事】
- いま注目されるホルモン補充療法(HRT)、「受けられないのはどんな人?」「併用してはいけない薬は?」ほか疑問に回答
- 《女性の心と体を救う「性差医療」》「性差」は長らく置き去りに 薬を必要としない女性に「検査値」だけで処方されることも
- 《薬の副作用》医師・薬剤師・看護師が本音座談会で明かす重篤な事例「鎮痛剤で転倒骨折」「抗生物質で呼吸困難」「市販の解熱鎮痛薬で腎不全」
- 厚労省管轄のPMDAに寄せられた処方薬の“副作用報告”から「死亡」「後遺症あり」「未回復」となった事例を抽出 その薬の「実名リスト」を公開
- 《市販薬・処方薬の「副作用」最新情報》厚労省管轄の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」が公開したものをリスト化