不特定多数による“いじめ”のように…SNSの普及で高まる「カスハラ対策」の重要性──ANAとJALも対策方針発表
ANAとJALが28日、共同でカスハラへの対策方針を発表しました。カスハラ対策に踏み込む企業が増える背景には、SNSの普及で深刻化するカスハラの実態が。 経済部で財界担当の城間将太記者と、流通担当の片山桂子記者が深掘りトークします。
■「偽名で搭乗」もカスハラ――JALとANAが共同で発表した「カスハラ対策方針」
財界担当 城間将太記者 「航空業界ではカスハラが非常に問題になっています。というのも、カスハラを受けた従業員がメンタルに不調をきたし、休職や退職に追い込まれてしまうと、従業員が減るわけですから、顧客へのサービスの質の低下にもつながりかねません。そのため、全日空グループと日本航空グループは28日、カスハラ対策方針を共同で発表しました。ただ、これは『カスハラに対してこういうふうに対応します』という宣言ではなくて、『どういう行為が従業員にとって迷惑行為にあたるのか』を明文化して示した形なんです」 流通担当 片山桂子記者 「例えばどういう行為がカスハラとして明文化されたんですか?」
城間記者 「暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷、暴行。あと、従業員の言動を理由に補償金や席のアップグレードなどを求める過剰な要求」 片山記者 「アップグレードって、ファーストクラスに乗せろとか?」 城間記者 「まさにそうですね。さらに、氏名の詐称。搭乗券を取るときに偽名を使ったりとかね。あと、『手伝いが必要だと偽る』など社員を欺く行為。例えば、けがをしていないのに『自分は足が悪いから早く乗りたい』ですとか。そして、事実と反することを写真を撮ったり録音したりしてSNSに流し、会社や社員の信用を毀損(きそん)する行為。こういった9つの行為をカスハラとして明文化して、従業員と客との間で共通認識を持てるようにしたんです」
■「JR東日本」「ローソン」「ファミリーマート」…企業に広がるカスハラ対策
片山記者 「カスハラはパワハラとかセクハラなどと違って、今は法律上の定義というものがないんですね。だからこそ、まずは定義を明確化する動きが広がっているんでしょうね。自治体でも同じような取り組みが広がっていて、東京都でも5月にカスハラの定義付けを行い、今後、全国初のカスハラ防止条例の制定を目指そうとしています」 城間記者 「対策に踏み込む企業も出てきていますね。例えば、JR東日本は今年4月にカスハラに対する方針を新たに策定しました。こちらでも、身体的、精神的な攻撃とか土下座の要求、社員の個人情報をSNS等に投稿するなどの行為が行われた場合、乗客へのサービスを行わないとしているんです」