日銀・黒田総裁会見12月17日(全文3完)イールドカーブ・コントロールは異常な政策ではない
イールドカーブ・コントロールが日本化を深化させたのでは
朝日新聞:朝日新聞の原です。イールドカーブ・コントロールについてお伺いしたいと思います。この政策を導入してからすでに5年以上経過したわけですけれども、この間、パンデミックの危機対応みたいなものもありましたが、欧米の中央銀行でこの政策を採用したところはありません。このイールドカーブ・コントロールがむしろ長期にわたって低金利予想を定着させて、それが低成長、低インフレ、低金利の、いわゆる日本化のようなものを深化させているという、そういう考え方、見方もできるわけですけれども、だから欧米金融機関は、欧米の中央銀行は導入しなかったのではないかという見方もできるわけですけれども、これについて総裁はどうお考えなのかということと、こういう問題意識で日銀の中で議論というのはされていることはないんでしょうか。 黒田:まずご指摘のようなことはまったく考えていません。今、言われたようなことは各国の中央銀行の人にせよ、さまざまなエコノミストでもそういう議論をしている人はいないと思います。それから世界的に中央銀行の中にイールドカーブ・コントロールを入れた国もありました。ただ、今回の、その国の物価が非常に上がってきたんで、金利を上げるっていうことで、イールドカーブを低位に置くということをやめています。ですから、それはその国の経済・物価情勢に合わせてされたっていうことだと思います。イールドカーブ・コントロールが何か異常な政策ということではまったくないと思います。 ちなみに量的緩和っていうのも日本銀行が始めて、その後、ほとんど世界中の中央銀行がやりました。それからフォワードガイダンスも日銀が最初にやって、これも広がって。ただ、最近になってフォワードガイダンスは途上国とか、一部の規模の小さなオープンエコノミーの中で、あまりフォワードガイダンスでコミットするのもどうかっていう議論が出ていることは事実なんですね。 ですから、さまざまな金融政策のツールについて、いろんなことが言われることは当然だと思いますけども、今、言われたようなこと、つまり金利を下げると経済成長とか物価上昇率が下がるというような議論をする人はあまりいないというふうに思います。 読売新聞:そろそろ時間が来てますがよろしいでしょうか。じゃあ総裁、ありがとうございました。 (完)【書き起こし】日銀・黒田総裁会見12月17日