ロックスターから指揮者へ。経営視点が求められる マーケター の未来像【DIGIDAYBRAND LEADERS 2024】
マーケターは、いまやロックスターではなく指揮者であるべき時代に──。 Digiday Japanが11月1日に主催した「DIGIDAY BRAND LEADERS 2024」のオープニングリマークで、Digiday Japan編集長の戸田美子はこう切り出し、本イベントのテーマ「DRIVE RESULTS. ~経営視点のマーケティング」を設定した背景について説明した。 マーケターが、単なる広告活動にとどまらず、企業の成長をけん引する重要な役割を担う時代になったこと、そのためには短期的な成果だけでなく、長期的な成長を見据えた戦略的思考が不可欠となっていることなどを示した。 では、マーケターの役割が具体的にどのように進化しているのか。戸田は、米DIGIDAY記者モンロー氏の言葉を引用しながら説明した。「より創造性・専門性が高いロックスターのような存在から、さまざまなことに目配せをしなくてはならない指揮者のような立場へと変わりつつあるのではないか。たとえるならば、ジャスティン・ビーバーのような存在ではなく、ベートーベンのような人物像だ」。 企業のニーズが多様化し、戦略的に経営に貢献するためには、従来の枠組みを超えた新たなアプローチが必要とされる。戸田は、マーケターの業務がどう「ベートーベン化」しているのかについて、DIGIDAYの記事をもとに、「戦略的な思考」「創造性とデータの両立」「組織の構築と組織間の連携」という3つの視点から示した。
マーケターの役割、3つの変化
まず1つめの変化は、マーケターには単なる短期的な成果だけでなく、長期的な成長を視野に入れた戦略的な思考が必要とされている点だ。マーケターには、プロジェクトごとの成果だけでなく、企業全体の成長を見据えた貢献が必要だという。この背景には近年の顧客獲得コストの上昇も影響しており、新規顧客を獲得して短期的成果を上げるだけではなく、既存顧客との強固なロイヤルティを築き、長期的な関係性の構築が鍵を握ると考えられる。 このような変化に対応するため、マーケティング部門の役割が再定義されつつあるという。特に、米国ではスターバックスやドラッグストアのウォルグリーンなどでCMO(最高マーケティング責任者)職を廃止するという動きが見られる。戸田はこの動きに対して、「この決定はネガティブなものではなく、むしろマーケティングの業務領域が多岐にわたるなか、CMOの役割を再構築する必要性から生まれたものだ」と説明した。 2つめの変化は、「創造性」と「データ活用」を両立させることが不可欠になっている点だ。企業やブランドの独自性を打ち出すためには、クリエイティビティが欠かせない。しかし、同時に現代の多様な消費者ニーズに応えるためには、データを活用することも重要な要素となる。 その具体的な事例として、戸田は、元ペプシコCMOトッド・カプラン氏のインタビュー記事を紹介した。カプラン氏は、マーケティング活動において、データを駆使しながらもその時代の精神を反映させる形で創造性を発揮する方法を提案している。 そして3つめの変化は、「組織の構築と組織間の連携」が必須となってきた点だ。限られたリソースのなかで効率的かつ効果的に成果を上げるには、基盤となる組織づくりが必須となる。戸田は、「経営視点を持って業務を実行するには、適切な人材の配置と、部門や役割の枠を超えて多様な職種の人が連携できる仕組みを整えることが重要だ」と述べた。 Digiday Japanがイベント参加者を対象に実施した事前アンケートによると、「ご自身の業務のなかで『今もっとも実現したい』または『しなければならないこと』を 教えてください(ひとつ選択)」という問いに対し、「顧客とのコミュニケーション」「データ活用」「横断型組織の実現」を挙げる人が多く、マーケターにとって主要な課題であることがわかった。加えて、戸田があげた、マーケターの業務における3つの視点にも共通しているところが多いことが明らかになった。 クリックして拡大 戸田は、Digiday Japanが今年5月にスタートした連載「LOOK INSIDE!」についても触れた。戸田は連載の狙いについて、マーケターの秘められた思考や哲学を掘り下げ、現代のマーケティングをどのように再定義できるのかを探ることをテーマにしていると説明。取材対象者のなかにイベント参加者も多く含まれていたことから、参加者が本イベントのテーマ「経営視点のマーケティング」をどう受け止め、どういったアプローチでマーケティングを行っているのかについて、知見を共有する場となることへの期待を示した。 また最後に、「DIGIDAY BRAND LEADERS 2024」に登壇する8名のスピーカーを紹介。スピーカーらのセッションを起点に、参加者同士のコミュニケーションが深まることを目指すと述べ、オープニングリマークを締めくくった。 文/坂本凪沙 編集/戸田美子 写真/山口雄太郎
編集部