アジア大会制覇へ使命感、「神戸」を世界で通用するブランドに<ヴィッセル神戸連覇の賛歌・下>
10月2日、今季新設されたアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)のホームでの山東泰山(中国)戦。連覇を目指すJ1リーグ戦に、天皇杯も戦う中2~4日の過密日程で公式戦が続く中、その先発リストにFW大迫ら主力がずらりと並んだ。「(ホームで)勝つか負けるかで(その後が)全然違う」と吉田監督は勝利にこだわった。昨季はJ1だけに注力して初優勝を成し遂げたが、今季は違う。10日現在、4勝1分け1敗でグループ3位につけている。 【図表】神戸の今季の戦い(Hはホーム、Aはアウェー)
2018年以降、「the No.1 Club in Asia」(アジア一のクラブ)をスローガンに掲げてきた。ただ、J1とアジアの戦いの両立は難しい。主に平日夜に開催するACLは十分な入場料収入が見込めないうえに、過密日程や移動による選手の負担も大きい。
神戸の千布(ちふ)勇気社長はアジア制覇にこだわる理由を、「より愛されるクラブになるため、より象徴的な勝利や達成が必要」と説明する。近年、日本サッカー界を取り巻く環境は大きく変わった。若手の海外移籍が日常化し、高校卒業と同時に渡欧する事例も増えた。人材流出に歯止めをかけ、クラブの魅力を高めるには、アジア、そして世界で通用するブランド力の創造が欠かせない。
神戸はこれまで、元ドイツ代表FWポドルスキや元スペイン代表MFイニエスタらスター選手を獲得し、国際的な認知度を上げてきた。昨秋にはイングランド・プレミアリーグの古豪アストンビラと提携し、下部組織の選手が練習参加するなどした。他の海外クラブとの提携も模索しており、千布社長は「神戸を経験してから(海外へ)、という若者が増えれば日本サッカー界の空洞化を避けられるかもしれない」と語る。
吉田監督も同じ思いを抱く。前線から連動してプレスをかけ、高い位置でボールを奪って攻撃に転じるスタイルは欧州の主流だ。「海外は(強度が)とんでもないプレスをしている。日本もそこに近づいていかないといけない。Jリーグを引っ張っていきたい」。ピッチ内外で「国際基準」のクラブへの挑戦は続く。
(この連載は藤井竜太郎が担当しました)