「“自分に刃を向ける”作品に惹かれるんです」漫画家・鳥飼茜が愛読する活字作品【私の愛読書インタビュー】
『先生の白い嘘』『サターンリターン』の作者で、このたび新作『バッドベイビーは泣かない』(講談社)第1巻が発売となった鳥飼茜さん。新作は「妊娠・中絶」がテーマながら、コメディ要素もあり、読み心地が軽くて楽しいと評判になっている。
さまざまなジャンルで活躍する著名人たちに、お気に入りの書籍をご紹介いただくダ・ヴィンチWebの連載「私の愛読書」。今回は、活字作品が大好きという鳥飼茜さんに、最近読んで感銘を受けた作品について話を聞いた。 (取材・文=立花もも 撮影=島本絵梨佳) ――お仕事場に、小説だけでなく、さまざまなジャンルの活字本が置かれているのが印象的でした。 鳥飼茜さん(以下、鳥飼) 今はほとんどマンガを読まないですね。子どもの頃は、それはもうマンガが大好きで、あれこれ読みふけっていたのですが、中学に入った頃から、意識的に遠ざけるようになってしまった。思春期の当時はオタクだと思われたくなかったんでしょうね。それでも、おもしろい作品は常に探していましたし、人目のつかないところで読んではいたんですけれど、マンガ家デビューしてからはいっそう読まなくなってしまいました。SNSに積極的でない理由と同じで、他人と自分を比べやすい性格だから意識的に避けている、というのも大きいと思います。活字の本は、マンガよりも自分と距離を離して読むことができるから、情報としても頭に入ってきやすいんですよ。 ――鳥飼さんの活字エッセイ『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)もマンガと同じくらい大好きで、もっと鳥飼さんの文章を読んでみたいなと思っているのですが、そもそも活字に対する興味も強いのでしょうか。 鳥飼 そうですね、活字を読むのは好きです。頭のなかがすぐに考え事でいっぱいになるので、それを避けるためにも、時間があれば何かしら読んじゃいます。商品説明や、新刊のあらすじだけでも、隙あらば文字を読みたい。 ――ふだんは、どのような本を読まれることが多いのでしょうか。 鳥飼 わりと、犯罪系のノンフィクションを読むのが好きですね。『バッドベイビーは泣かない』のインタビューでお話しした、木目田さんのモデルに対する想いと共通しますけど、やっぱり、現実の強度には勝てないなと私は思ってしまうんです。だから小説を読むときも、自分自身に刃を向けて、えぐりだすように描かれているものに惹かれます。 ――最近、おもしろかった小説としてあげていただいたのは安堂ホセさんの『DTOPIA』(河出書房新社)ですが、どんなところに惹かれたのでしょう。