「また間違えてる!」元小学校教諭が警鐘を鳴らす、親がついやりがちな“ダメ出し”が子どもに及ぼす悪影響
使うのはマルとハナマルだけ!
【ひとし】 へえ、すごい! なんか具体的なエピソードで教えてほしいな。 【はるか】 一番わかりやすい例で言うと、漢字の宿題。漢字の宿題が出たときに、子どもの間違いを一生懸命直してあげている熱心な親御さんって多いんだよね。 【ひとし】 「ここハネなさい」「ここちゃんと止めようね」とか? 【はるか】 そう。たとえば算数の間違いだったら、数字が違うから子どもも自分で間違いに気づける。一方漢字だと、大人は気づくけど、子どもは間違いに気づかないパターンが多い。だから、親子でぶつかることが結構あって。 【ひとし】 なるほど、それがあるあるなんだ。 【はるか】 親御さんは「正してあげたい」って一生懸命なんだけど、間違いを指摘されると、子どもは勉強に対して「嫌だ!」という感情を抱く。プラス、親御さんのこともちょっと嫌になってしまう。 【ひとし】 そっか。たしかに間違いを指摘されるのは大人でも嫌だもんね。 【はるか】 もちろん、そういう熱心な指導は、絶対にお子さんの力になると思います。でも、それで親子関係が悪くなってしまったら、もったいないじゃないですか。代わりにポジティブな方法で子どもの間違いを改善できたら最高だよね。 【ひとし】 そんな良い方法あるの? 【はるか】 そこで「ヨイ出し」なんです。これは本当に僕流なんだけど……。 子どもが書いた漢字を添削するとき、まずバツは絶対つけません。「ヨイ出し」の考えを基に、マルかハナマルだけを使います。 【ひとし】 いいね、うれしい! 【はるか】 漢字を正しく書けてたらマル。間違いには何もつけない。そうすると、子どもはだんだん「マルがついてない部分は?」って気になるようになるんです。 【ひとし】 そうだね、「何もついてないコイツらはなんなんだ?」って思うかも。 【はるか】 バツがついていた場合は「バツだ」という事実が目立ってしまって、落ち込んだり勉強が嫌になったりするんだけど、バツではなく「マルがついてない箇所」だと認識したら、子どもは「ここをマルにしたい!」と思うんだよね。だから、ほとんどの子が自発的に書き直してくるようになります。 【ひとし】 へえ、そんなことがあるんだ。 【はるか】 さらに、「他の字よりも丁寧」とか「はらいがしっかりできてる」とか、とくに良いなと思ったところを見つけて、ハナマルをつけてあげます。そして、「ハナマルと普通のマルの違い、見つけられるかな?」とか言って投げかけると、子どもたちは一生懸命探すんです。そこで自分の間違いに気づいたり、細かいとめ・はね・はらいまで目を向けるようになったりする。子どもたちは「ハナマルの数を増やしたい!」と思って、だんだんすごく丁寧に漢字を書くようになるんですよ。 【ひとし】 ハナマルが細かいところまで気をつける動機になるってことか。 【はるか】 そうそう! ただ「正しく書けたね!」と褒めるだけで終わっていると、子どもが現状で満足してしまう場合もある。だから「違いを見つけよう」「ハナマルを目指そう」とかって次のステップまで提示するのがポイント。それがうまくできたら、間違いを指摘せずとも子どもの力が伸びていくんです。 【ひとし】 なるほどね。 【はるか】 なによりも大事なのが、こうやってヨイ出しの考えを基に「褒める」を前提にすると、勉強に対して「嫌い」って感情がなくなっていくってことです。 【ひとし】 たしかに、勉強を好きになってほしいって発想はいつも大事にしたいね。