【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】『花束』サヘル・ローズ監督とのスペシャル対談:監督未経験で挑んだ本作に込めた熱い想いとは?
背中を押してくれた、岩井俊二さんの言葉とは
LiLiCo そこでシライさんやエグゼクティブ・プロデューサーの岩井俊二さんを監督に、とはならなかった? サヘル・ローズ そのお話はしたんですが、ケイタさんから「サヘルは?」と言われたんですよ。なぜかっていうと、私が1番想いを強く持っているし、当事者が当事者を見つめたときに、彼らの心情を全部理解できると思うし、誰か別の人がこのテーマを勉強したばかりの状態で作れる作品ではない、と。 確かに一理あるんですが、私は表現することですらまだまだ未熟、そんな私が作ることはもっとできないし、やってはいけない、とそう思っていました。それで、岩井さんに相談したんです。そうしたら「(サヘルは)監督をやった方がいいと昔から僕は思ってた。なぜなら作り手は孤独と闇を抱えてなければいいものを作れないし、抱えているものをアウトプットするのが映画。サヘルさんはすでにそれを抱えてるし、僕は観てみたい。全力で協力するから、監督やってみたら」と、ちょっと言っていて恥ずかしいのですが、貴重なお言葉をいただいたのです。岩井さんのお言葉を信じ、自分で監督をすることを決めました。 LiLiCo だからか! 佐藤浩市さんが登場したときに声出ちゃいましたけど、浩市さんも支援活動されてたんですね。知らなかった。 サヘル・ローズ そうなんですよ。それで私が監督するからには、出演を決めてくれた8人の当事者のバックにいる同じ境遇の人たち……日本では今4万2000人近い当事者たちがいるんですが、彼らがこの映画を観ることで、当事者自身が自分のことを語ることはOKなんだ、「かわいそう」ではないことなんだ、と気づいてくれたら。「ひとりだけじゃない」と感じてほしくてね。 また、キャスト8人が紡ぎ出す人生はとても耳を塞ぎたくなる、目を覆いたくなるような経験なんですが、気づくとみんな笑いながら話してるんですよ。その姿を見ることによって、エネルギーを与えられるんじゃないかなって思うんですよね。 LiLiCo そうなんですよね。特に「子どもは親のために生まれて、親のために死んでいくもんだと思ってた」っていうの……痛いよね。違うのに。 サヘル・ローズ そうそう。そこは当事者だけでなく、みんなに、世の中に通じるんじゃないかなと思っています。