なぜプロマラソンランナー川内優輝は「東京五輪を考えていない」のに最終選考レースであるびわ湖毎日を走るのか
東京五輪マラソン代表を決める最終選考レース、MGCファイナルチャレンジを兼ねたびわ湖毎日マラソン(8日・皇子山陸上競技場発着)の招待選手会見が6日、びわ湖大津プリンスホテルで行われ、昨年のドーハ世界陸上マラソン代表でプロランナーの川内優輝(33、あいおいニッセイ同和損保)が「東京五輪よりも伝統、権威のあるびわ湖」という独自哲学を明らかにした。「東京五輪(出場)は考えていない」という川内が、なぜ新型コロナウイルス感染拡大の状況下において今大会に出場するのか。レースのペースが、大迫傑(28、ナイキ)が東京マラソンで更新した2時間5分29秒より1分以上遅く設定されているだけに、今大会の見どころは”最後の1枠を争う戦い”からは距離を置く川内のレースかもしれない。
「現実的に今東京五輪を狙える状態ではない」
川内は「東京五輪」という質問者の言葉に拒否反応を示した。 「東京五輪に出たいのならばMGCに出ている。ドーハの世界陸上を狙った時点で、東京オリンピックは考えていません。現実的に今狙える状態ではない。世間的には、東京オリンピック、イコール、東京マラソン、イコール、マラソン大会、イコール自粛と結びつけられる。凄く嫌なイメージがある。あまりオリンピック、オリンピックと言われることは……個人的には、権威があって、伝統のあるびわ湖毎日で、練習した成果を発揮するために、今ここにいる」 オリンピック、オリンピック…の次に飲み込んだ言葉は「不本意だ」なのだろう。 川内は、対象2大会の平均タイムを2時間11分以内としMGCへの「ワイルドカード」での出場資格を得たが、9月のMGCではなく、10月のドーハ世界陸上出場を選んだ。東京で大迫が自らの持つ日本記録を更新する驚異的なレースで、日本中を感動させ、残り1枠をほぼ手中にしているが、ファイナルチャレンジを兼ねたびわ湖で、その日本記録を更新して日本人トップとなれば、逆転で代表権を得ることができる。 だが、川内の「東京五輪は考えていない」という考えに変わりはなかった。むしろ、東京五輪、東京マラソン、そして、新型コロナウイルスの影響によるレース自粛と、連鎖しているマラソンのイメージに嫌悪感を抱く。それでも、東京五輪へのファイナルチャレンジを兼ねたこのレースに出場したのは「自らの限界に挑戦する」というプロランナーとしての矜持であり、スポーツイベントの中止、延期、自粛が続く情勢下で、彼なりのメッセージを伝えたかったからだ。 「ドーハが終わってから調子が悪い。絶不調でスピードがなかったが、だんだんとスピードが戻ってきた。僕としては、なんとかサブ10(2時間10分未満)に戻したい。東京マラソンを見ていて、サブ10にどれくらいの価値があるのか疑問に思う方もいらっしゃると思うが昨年のびわ湖以来、サブ10ができていない。そこを達成しないことには次に進んでいくことができない。最低、福岡のシーズンベストを更新しなければならない。レース展開としては、先頭についていくしかない。終盤に自分の目標を意識しながら走っていければいい」