なぜ第三次越境ECブーム到来と言われているのか? アフターコロナ下の訪日外客の傾向や市場規模の推移などを解説
一方で2024年現在、訪日外客数はコロナ前に迫る勢いで回復、2023年10月には初めてコロナ前を上回る訪日外客数を記録しています。
■ アフターコロナも越境EC市場規模は伸長 越境ECへの注目が高まった2020年当時、その活況に対し「人流復活後は、越境ECの流通も減少するのではないか?」という質問が数多くあがりました。 こうした質問に対し、私は「多少の影響は考えられるが、人流復活後もすべての人が簡単に訪日できるわけではなく、一度訪日したらその次の訪日は数年後という人も多い。越境ECによる購買を一度経験すれば、それが生活のなかで便利なサービスとして認識、定着していくはずなので市場が縮小することはないはずだ」と回答してきました。
次のグラフは、経済産業省「電子商取引市場調査」による越境EC市場規模と、「Buyee」の流通総額推移を合わせたものです。オレンジが日米中間の越境EC市場推計(左軸)、ブルーが四半期ごとの「Buyee」の流通総額推移(右軸)を示しています。
越境ECの市場規模は日米中間のみの数字ですが、コロナ禍以降も継続して伸長。また「Buyee」の流通総額も過去最高を更新し続けています。 ■ 越境EC利用ユーザー層が拡大 2023年にBEENOSが発表した「越境ECランキング」では、流通拡大だけでなく、日本発の越境ECを利用するユーザー層の拡大も示しました。2020年時点では30代前後の男性が購買の中心ユーザーでしたが、2023年には20代~40代まで大きく広がり、女性ユーザーも増加しています。
日本発の越境ECで商品を購入する消費行動が、特定層から幅広い層に拡大していることがわかります。これは、コロナ前の質問に対する予想が当たっていたことを示す結果になったと考えています。
インバウンド復活が、越境ECにプラスの影響を与える
ここまで、コロナ禍の越境EC市場動向を振り返り、コロナ後の越境EC市場について解説しました。 人流復活後も越境EC市場は成長を続け、利用ユーザーの裾野も広がっています。インバウンドの復活は越境ECにどのような影響を与えるのでしょうか? 私は、インバウンドの復活が越境ECにプラスの影響を与えると考えています。 訪日外客数は、コロナ前と同じような形で復活しているわけではありません。インバウンドの文脈において注目度の高い中国からの訪日外客数はコロナ前の水準には戻っていないものの、それ以外の国や地域からは過去最高の人数を記録しています。 2024年2月には、韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、中東地域からの訪日外客数が、2月として過去最高記録を達成。台湾、ベトナムについては単月過去最高を更新しています。(参考:日本政府観光局の報道発表資料) 円安の影響で訪日しやすい環境が続いていることを背景に、それだけ多くの国の人が、直接的に日本の文化や商品などに触れる機会が増大しているということでもあります。 ■ 帰国後の「欲しい」「買いたい」に応える コロナ禍の越境ECの役割の1つに「忘れられない関係性作り」をあげました。日本発の越境ECの特徴として、安さや物量だけではなく、日本でしか購入できない独自性や品質の高さへの需要があげられます。そのため、さまざまな国の人々が直接、日本の商品の魅力や食などの文化に触れることで、帰国後も「再びその商品を欲しい」「その文化を再体験したい」と思うことは非常に重要です。 第二次越境ECブームまでは、越境ECに取り組む日本の企業も限定的でした。つまり、帰国後に「日本の商品を欲しい」と思った時に、購入できる導線が引かれていなかった状態だと言えます。 しかし第三次越境ECブームを経た現在、越境ECに取り組む企業も増えたことで、帰国後の「欲しい」を実際に「買える」につなげる環境の整備が進んだと言えます。越境ECを活用することで、訪日の消費を一時的なものにせず、継続的な関係性に発展させることができるのです。 次回は「Buyee」ユーザーへのアンケートを通して、越境ECを活用したリピート購入の可能性について探ります。