その処方は要注意…やっぱり薬は「飲みすぎてはいけない」多剤処方がもたらす「意外なリスク」【医師が予防医学から警告】
薬が適量かどうかは血液検査でわかる
このような薬による有害事象が起こらないようにするため、本来、新規の病態に対する薬の処方は、まず2週間分を出し、それが終了した時点で一度検査を行って問題がなければ次は1か月分を処方、それを3か月間ほど続けて効果が出ているかどうか、問題がないかどうかを確認してから、2か月分、3か月分の長期処方に延ばしていくのが正しい手順です。 しかし、多忙な医療機関などでは、そうした手続きを踏まずにいきなりドンと長期で処方されるケースも少なくありません。ですから、もしもそうした適切ではない長期処方があった場合、患者さんの側から拒否してもらいたいと思っています。 「まずは2週間後に検査してください」 「また2か月後に来るので診てください」 といったように、医療者側に“正しい処方の手順”を提案してほしいのです。 薬の副作用はさまざまな事象から判断できますが、いちばんシンプルによくわかるのは血液検査です。薬が適量かどうかは、血液中の濃度を測定して知ることができます。高濃度だと有害な副作用を示す抗不整脈薬や抗がん剤の一部などは、血中濃度測定が保険適用になっていて必須です。 また、薬によって肝機能や腎機能といったさまざまなバイオマーカー(生理学的指標)の数字も変化します。 薬物治療では、それらを定期的に見てもらいながら続けていくことが大切です。定期的な検査や診察を受け、薬の効果、病状の変化、副作用の状態をチェックし、それに応じて薬の種類や数を変更するなどの調整を行うのです。
薬の処方では、これまでの薬を削ることも必要
飲む必要がなくなった薬を減らす場合もあります。今の薬は昔と比べるとよく効くようになっていますが、その分、副作用も強い傾向があるので、なおさら適切な管理が必要といえるでしょう。 薬物治療における最大のトラブルは「薬害」です。薬害が起こった際、薬を処方する医療者側の問題が大きいのはたしかですが、患者さん側にも一定の責任が存在します。仮にトラブルが起こっても、医療者側に100%責任があるとは認められないケースがほとんどです。それをしっかり理解しておくべきです。 一般的に多剤処方する医師は、新しい薬をそのまま追加しがちですが、本当はそれまで使っていた薬を削ったうえで変更するべきなのです。患者さん側も安易に自分の希望で薬を処方してもらうことは避けましょう。 あらためて適切な薬の処方を見直すことが、自身の健康を守り、医療費の無駄を減らすことにつながります。 …天野篤医師の前編記事<使い方しだいでこんなに変わる…間違えると「病状が悪化する」湿布の危ない使用方法…予防医学に明るい医師が教える>はこちらからどうぞ
天野 篤(心臓血管外科医)