小惑星「2024 UQ」(A11dc6D)を落下前に観測 前回の同様事例からわずか1か月半後
様々な悪条件が重なった10例目「2024 UQ」
2024年10月22日、地球近傍天体を発見するシステムである「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」が新しい天体、暫定名「A11dc6D」を発見しました。A11dc6Dは、ジェット推進研究所(JPL)の地球近傍天体危険評価システム「スカウト(Scout)」と欧州宇宙機関(ESA)の衝突危険警告システム「ミーアキャット(Meerkat)」によって、落下する可能性が高いことが予測されました。 ただし今回は様々な悪条件が重なっており、落下前に観測することに成功はしたものの、落下を事前に予測するという目標の達成には事実上失敗したと言えます。なぜなら、A11dc6Dの発見は落下のわずか1時間46分前であり、落下予測を行うシステムに情報が届く前に実際に落下していたためです。このため上述した落下予測も、実物の落下後に情報が発信されました。 理由としては、A11dc6Dが約1mとあまりに小さく、暗いこともありますが、発見したATLASの技術的な理由もあります。ATLASは4つの望遠鏡の観測情報を組み合わせて小惑星を発見していますが、観測する夜空の領域は望遠鏡ごとに異なっています。発見時のA11dc6Dはちょうど観測領域の境界部に位置しており、観測自体が通常よりも遅くなってしまいました。総合的には、ATLASによる観測回数はわずか6回に留まりました。 また、情報を受けて記録を見直すと、別の地球近傍天体発見システムである「カタリナ・スカイサーベイ」にもA11dc6Dが撮影されていることも分かりました。ただし、ATLASより前に撮影できていたものの、カタリナ・スカイサーベイによる観測回数はわずか3回であり、これだけで詳細な予測を行うことができません。結局のところカタリナ・スカイサーベイによる撮影報告は、落下後の事後報告となってしまいました。 とはいえ、ATLASとカタリナ・スカイサーベイの観測情報があったことにより、小惑星として認定される重要な要素である公転軌道の決定ができました。小惑星を管轄する「小惑星センター」が、A11dc6Dが正式に小惑星として認められたことを示す仮符号「2024 UQ」を付与したことを、小惑星電子回報(MPEC)で公表したのは、落下から1日以上経った23日16時56分になってからでした。 とはいえ、落下の事前予測の失敗という評価は、2024 UQと同じ大きさの小惑星が2週間に1個落下していると推定されている背景も考慮しないといけません。それほどの頻度で発見報告がされていないということは、そもそも大半は観測自体がされていないことを意味します。落下の事前予測に失敗したと言っても、観測ができたこと自体に意義があると言えます。 2024 UQのように、落下前に観測することに成功した小惑星は観測史上10例目です。また、2024 UQの観測は、前回の事例である2024 RW1から約1か月半後のことでした。これはこれまでで最短の間隔となります。また、2024年中では3例目となる落下前に発見された小惑星であり、同じ年中に3例目が記録されたのは史上初めてです。