世界の女性が憧れる「パリジェンヌ」という存在
おしゃれ、洗練されている、チャーミング、ミステリアス、セクシー、時には危険な香りも漂わせ......パリジェンヌにはそんなイメージがある。なぜパリジェンヌはかくも魅力的な存在なのだろう。 【写真】パリジェンヌたちがお気に入りのエリアトップ10
「ニューヨーク・タイムズ」紙は昨秋、フレンチガールのジャンヌ・ダマスが手がけるブランド、「Rouje(ルージュ)」のソーホー店オープニングを報じるとともに、彼女のスタイルを「いわば典型的パリジェンヌスタイル」と評した。具体的にはキャメル色のトレンチコートに無造作な前髪、完璧な口紅だ。パリジェンヌスタイルの代表格としてすぐに思い浮かぶのはシャルロット・ゲンズブールやカロリーヌ・ド・メグレ。彼女たちの先輩にはカトリーヌ・ドヌーヴもいる。彼女たちの自由で不遜な精神は、エレガンスとカジュアルさが絶妙に入り混じるワードローブやライフスタイルに表れている。
洗練されたおしゃれとミステリアスな魅力
パリジェンヌのイメージが作られたのは昨今ではない。19世紀末にはバルザックやゾラの作品等の文学に早くも登場している。その後、パリジェンヌはファッション、書籍、写真、映画を通じて全世界で憧れの存在となった。米国でもこの50年間でパリジェンヌのイメージが定着した。イザベル・アジャーニやカトリーヌ・ドヌーヴのアカデミー賞ノミネートを契機に、アメリカでパリジェンヌのイメージが増幅しながら形成されていく。「小粋で洗練されていて魅力的、そしてミステリアスな存在。パリジェンヌが持つ"何か"がその定義を難しくします。逆説に満ちた存在です。ある時はエレガンス、魅力、洗練といった言葉と結びつき、ある時は浪費家、セクシー、危険な存在といった言葉と結びつくのです」と解説するのはモナーシュ大学教授で『La Parisienne in cinema - between art and life(原題訳:映画の中のパリジェンヌ)』の著者であるフェリシティ・チャップリンだ。
代表格はシャルロット・ゲンズブール
多彩な顔を持つパリジェンヌの代表格がシャルロット・ゲンズブールだ、とフェリシティ・チャップリンは言う。『Charlotte Gainsbourg, Transnational and Transmedia Stardom(原題訳:シャルロット・ゲンズブール、国もメディアも超越したスターダム)』という著作もあるフェリシティ・チャップリンは、「魅力的な人物です。有名人として生まれ、虚構と現実に対峙し、強さと脆さを併せ持ち、内気なのに挑発的で、控えめなのに過激さも持ち合わせます」とその魅力を語る。ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールの娘として生まれたシャルロット・ゲンズブールはニューヨーク生活も長く、アメリカでの知名度も高い。多感な性格はファッション分野でのコラボレーションに表れている。バレンシアガのニコラ・ジェスキエールからルイ・ヴィトン、そしてザラのような大衆ブランドまで、実に幅広いのだ。音楽分野ではベック、エア、ダフト・パンクらと楽曲を作り、映画では、夫のイヴァン・アタルやアニエス・ヴァルダの作品からラース・フォン・トリアーの異色作まで出演している。ただし、映画女優としてはマリオン・コティヤールの方がアメリカで有名かもしれない。2007年の『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でアカデミー主演女優賞を獲得し、ハリウッドを席巻した。ファッションアイコンであり、ヒット作に恵まれた女優はアメリカにおけるパリジェンヌ神話をさらに強固なものとした。