世界の女性が憧れる「パリジェンヌ」という存在
暮らしを楽しむパリジェンヌ
パリジェンヌのステレオタイプなイメージも評判も、この何十年間あまり変化していない。「ニューヨーカーにとって、パリジェンヌは茶髪のショートヘアに赤い口紅でいつもおしゃれな女性。自信に満ちて堂々と振る舞い、ストレスや疲労困憊とも無縁。暮らしを楽しむ術を知っている存在です」と言うのはニューヨーク出身、パリ在住のキャリー・アン・ジェームズだ。彼女は、オンラインでフランス語が学べる「French is Beautiful(フレンチ・イズ・ビューティフル)」を立ち上げ、エッセイやメディテーションを通じてパリの雰囲気を味わえる「パリ・レッスン」を提供している。 ニューヨーク出身のフランス系アメリカ人インフルエンサー、レアンヌ・アンサーも同意見だ。彼女はロマンチックすぎるほどのパリジェンヌ関連コンテンツを発信している。「インスタグラムで人気を得たいと思うのなら、やはりフランス生活の定番を投稿するのが一番。パリのカフェのテラスでくつろぐとか、パン屋でクロワッサンを買うとか。典型的なイメージを大事にしています」と冷静に分析している。インスタグラムで彼女はトレンチコートを着てパリの街を散歩したり、セーヌ川のほとりで友人とワインを楽しんだり、マリンシャツにジーンズ姿でアパルトマンの床に座り、タバコをくわえながら本を読んだりしている動画をソフトミュージックと共に流している。
美しくも古臭いイメージ
ニューヨークとパリを行き来するキャリー・アン・ジェームスに言わせれば、このようなパリジェンヌのイメージは美しくも古臭く、現実と乖離している。「海をへだてていても、女性の暮らしはどこでも似たようなもの。家事に追われ、ストレスを抱え、疲れています。唯一の違いは、パリジェンヌの場合、身だしなみとか、他の人からどう見えるかを気にしていることです」とキャリー・アン・ジェームスは違いが服装に表れることを指摘した。パリジェンヌは、ニューヨーカーのようにルルレモンの定番レギンスにスニーカーといったスポーツウェアで出かけない。「表で誰と出会うかわからないから」だ。そしてそのことはパリの街なかを歩くだけでも違いがわかるとレアンヌ・アンサーは言う。「パリジェンヌは、意識していなくてもスタイリッシュです。ニューヨークの女性は日々それをお手本にしようとしているのです」 パリジェンヌがヨガウェアを着て外出することが少ないのは、スポーツにあまり依存していないからで、一方、ニューヨークの女性たちは毎朝の「ワークアウト」に固執していることもキャリー・アン・ジェームスは指摘した。「パリジェンヌの方が時間と穏やかに向き合っています。時間を何に、どう使うかについて、より自覚的なのです」とのこと。それはより自然体と言いかえられるかもしれない。ニューヨークの女性たちはいざとなるとヘアからメイクまで入念な身支度をするために時間を多大に消費する。 時間感覚の違いは仕事において最も顕著だ。「たとえば米国、とりわけニューヨークでは仕事をとても重視します。パリでは、ヴァカンスの方が重要だし、一般的に休憩時間も大事にします」とキャリー・アン・ジェームズ。「これはアメリカ女性がパリに抱く妄想につながります。自分たちもパリに住めば散歩したり、テラスでコーヒーを飲んだりする時間がもっとあるだろうと想像するのです」