米司法省 vs Googleの裁判のゆくえ Androidユーザーへの影響は?
Googleにとって2024年はAIの年(だと公式ブログで言っています)でしたが、日本を含む複数の国や地域から独占禁止法違反だと批判された年でもありました。 【画像】Googleの反論 中でも米国での独禁法訴訟で、Android搭載端末でGoogleサービスを必須としないようにさせるか、それでもだめならAndroidを売却させるか迫るよう米司法省が裁判所に求めたことは、エンドユーザーの私たちにも影響しそうです。 まだ進行中の裁判で、決着がつくのは数年先になるかもしれませんが、現時点でどうなっているのか整理しておこうと思います。
これまでの流れ
この裁判自体は2020年に始まったものです。司法省が、Googleはネット検索市場と検索連動型広告市場で約90%のシェアを占め、独占的な地位を築いているとして連邦地裁にGoogleを提訴しました。で、2024年の8月に連邦地裁が独占禁止法違反を認定する判決を下したのです。 判決が出てそれで終わりではなく、次の段階として原告の司法省と被告のGoogleがそれぞれ、“最終判決案”を裁判所に出して(今ここ)、それを裁判所が検討して最終判決を出すという流れです(Googleはたぶん控訴します)。 それぞれの最終判決案の要点をまとめて紹介します。
司法省の要求:Chrome売却、そしてAndroidは?
司法省の最終判決案の要点は以下のような感じです。 1. Chromeブラウザの売却 2. Appleなどとの有償契約の停止 3. Android搭載端末でGoogleのサービスを必須にすることの停止またはAndroid OSの売却 4. 検索に使用されるインデックス、データ、フィード、ランキングシグナルなどをAPI経由で他社に開放 ネット検索市場の独占がいかん、ということであっても、さすがにGoogleの根幹であるGoogle検索エンジンを売却しろ、とは言わないんですね。 1は、Chromeブラウザはブラウザ市場シェアで今のところトップで、このブラウザの検索エンジンがデフォルト(初期設定)でGoogleになっているので、これをGoogleから切り離せばユーザーが他の検索エンジンを選ぶ可能性が高くなる、と司法省は考えたようです。 例えばOpenAIがChromeを買って、ChatGPTをデフォルトの検索エンジンにしたらGoogleにとって結構脅威になるかもしれません。 2は、例えばAppleがSafariのデフォルトの検索エンジンをGoogleにする代わりに結構な大金を支払う契約を結んでいるのをやめれ、ということです。これについてはAppleが反対しています。FirefoxでApple同様の契約を結んでいるMozillaも、Googleとの契約金が貴重な収入源なので、これがなくなったら困るでしょう。 3が、Androidユーザーとして一番気になるところ。XperiaでもAQUOSでも、Android端末にはGoogleアプリやGoogleマップなど、Googleの一連のサービスがプリインストールされています。これはGoogleもバイスサービス(GMS)認証の条件として義務付けられているからですが、この義務付けをやめれ、ということです。やめれば健全な競争が発生すると司法省は考えているようです(「それでもだめならAndroid OSの売却」というのは、司法省が提示した基準まで競争が盛り上がらなければ、Androidを売却しろ、という意味)。 でも、アプリのプリインストールは別にGoogleが一方的に押し付けているわけではなく、嫌ならHuaweiのようにGMSを搭載しなくてもやっていけるはず。個人的には使いにくいメーカー製アプリがたくさんプリインストールされたスマートフォンは嫌だなぁ。 4は、Googleからすれば、ありえない要求です。長年苦労して育ててきたインデックス、データ、フィード、ランキングシグナルは、Google検索の命。これをBingやDuckDuckGo(や、もしかしたらPerplexityとか)に渡すなんて。しかも、データはAIのトレーニングにも大事なもの。OpenAIやAnthropicなどが飛びつきそうです。Googleの偉い人が「行き過ぎ」と憤慨するのも無理はありません。 司法省はAIに関しても、検索エンジンと競合する可能性のある技術を持つAI企業への出資の制限や、パブリッシャーやWebサイトオーナーへのAIモデルのトレーニングからのオプトアウト機能の提供を求めています。