アメリカ式民主政治とは? 中間選挙は対立と混乱の始まり
「ねじれ」と「分割政府」状態に
米ワシントン・ポスト紙によると、11月9日午後3時(日本時間)現在、下院は民主党が全435議席中半数を超える225議席を獲得して多数党化した。他方、上院は今回の改選35議席中、民主党は多くの選挙区で勝利したものの、そのうち26についてはそもそも現職が民主党系だったこともあり、多数派の奪還はもともと困難だった。その結果、全100議席中民主党は46、共和党は51を確実にし、共和党が多数を維持することになった。 この結果、連邦議会は上院と下院でねじれが発生するとともに、分割政府の状態となることが確実となった。これは、アメリカ国民の間でトランプ大統領の政権運営方針に一定の歯止めをかけてほしいという意向が強いことを示唆しているといえるだろう。だが、それと同時に、下院で二大政党間の議席に大きな差が発生していないことは、トランプ政権に対して底堅い支持があることも示唆している。 また、中間選挙に合わせて実施された出口調査の結果、アメリカ社会が分断状況にあることも明らかになっている。米ABCテレビが行った出口調査によれば、トランプ政権の支持率は44%で、不支持率は55%。アメリカ国民が政治的に分断されていると考える人は77%に達している。下院の多数を民主党が握ることについては、良いと考える人が50%、良くないと考える人が46%だった。
予算通過は困難、弾劾可決も可能性低く
このように、今後のアメリカ政治は、議会がねじれ、分割政府が発生し、国民の意識が分断状況にある中で展開されることになる。アメリカの政党政治では近年、政党規律が高まる(日本流に言えば造反候補が減少する)傾向と、二大政党間の対立が鮮明になる傾向が同時に発生していることを考えると、今回の選挙結果は残りのトランプ政権の運営を困難にするだろう。 今後、二大政党間で協調が可能な政策は、インフラ投資と、既往症を持つ人に対する医療保険政策ぐらいしかなく、他の重要争点については立場が明確に分かれている。2020年大統領選挙に向けて、二大政党がともに「違い」を明確化しようとする可能性が高いことを考えると、連邦議会で重要法案が通過する可能性は低くなる。トランプ政権は議会の上下両院ともに共和党が多数を握っていた時期ですら予算を通過させることができず政府閉鎖に追い込まれたが、ねじれ議会と分割政府の状態になると予算通過は一層困難になるだろう。さらに、トランプ大統領はこれまで以上に、大統領令に依拠した政権運営を行うことになるだろう。 下院の多数派を民主党が握ったことにより、トランプ大統領の弾劾に向けた動きが出てくる可能性もある。もっとも、弾劾には上院の出席議員の3分の2の賛成が必要なので、実際にトランプが弾劾される可能性は極めて低い。とはいえ、弾劾裁判の検事の役割を果たす下院の多数を民主党が握っているので、民主党は2020年の大統領選挙の日程なども念頭に置きつつ、トランプのこれまでの醜聞を明らかにすることを目的として、弾劾に向けた手続きを取る可能性もある。これはトランプ大統領の政権運営を大きく制約するだろう。 次の2020年大統領選挙との関連で言えば、二大政党ではともに手探り状態が続くことが明らかになった。今回の中間選挙に特異だったのは、議院内閣制ではなく大統領制を採るアメリカの連邦議会選挙であったにもかかわらず、党の顔として選挙戦を戦ったのが、民主党はバラク・オバマ前大統領、共和党がトランプ大統領だったことである。これは、連邦議会議員の中に党の顔の役割を担うことのできる人がいなかったことを意味しているが、それと同時に、実は民主党、共和党ともに内部に大きな亀裂があることの表れでもある。