アメリカ式民主政治とは? 中間選挙は対立と混乱の始まり
ドナルド・トランプ大統領の「中間評価」として注目されたアメリカの中間選挙は、上院が共和党、下院が民主党が勝利し、「ねじれ」と「分割政府」状態が生まれることになりました。事前の世論調査通りの結果でもありますが、今回の中間選挙の結果をどう見るか。日本の議院内閣制とは違う、大統領制を採るアメリカの政治制度などを踏まえて、アメリカ政治に詳しい成蹊大学の西山隆行教授に解説してもらいました。 【図】強くて実は脆いアメリカ大統領 「弾劾」に必要なプロセスとは?
「すべての政治はローカルだ」の名言
今回は中間選挙としては例をみないほど多くの注目を集めた選挙だった。中間選挙に際して、有権者は3つの点を念頭において投票すると考えられる。 第1は、選挙区の事情である。かつて下院議長を務めたティップ・オニールは「全ての政治はローカルだ」という名言を残したが、アメリカの有権者は選挙区内における利益の実現を目指して投票する傾向が強い。アメリカでは中央の連邦議会に対する不信は強く、ギャラップ社の調査では最近の連邦議会に対する支持率は21%と低い。にもかかわらず、通例の議会選挙では現職候補の再選率は9割を超える(今回の中間選挙についてはまだ全議席が確定していないため不明)。これは、有権者が連邦議会議員一般と自分の選挙区の議員を区別して考えており、選挙区の事情を考慮して投票先を決めていることを示唆している。 第2は、連邦議会のあり方をどうするかという考慮である。連邦議会で上下両院の多数派をどちらの政党に握らせるか。各院で多数を握った政党は、各委員会の委員長ポストを独占することができるため、政策過程で大きな影響力を行使することができる。下院の場合は下院議長も多数党が握る(上院の議長は憲法上副大統領が兼職することになっている)。有権者はこの点を考慮しているだろう。 第3は、大統領への中間評価という点である。今回の選挙では特にこの点が強調されることが多かった。大統領の政治方針を継続させたいと考える場合は政権党の候補に投票し、逆に修正を迫りたいと考える場合は非政権党に投票することになる。アメリカでも、日本と同様、議会の上院と下院の多数派が異なる「ねじれ状態」になることがある。だが、仮に議会がねじれていなくても、連邦議会の多数派と大統領の所属政党が異なる事態も発生する(この状態を「分割政府」という)。ねじれを発生させるか、分割政府を発生させるかという考慮は、立法・行政・司法の「三権」の抑制と均衡を重視する大統領制を採用するアメリカでは重要な意味を果たしている。