じつは、炭水化物と混ぜ合わせなければ「脂肪は燃えない」…! なんと、山頂ラーメンは「あなどれない山ごはん」だった
登山のときは「シャリバテ」厳禁
このあと、もう一つ印象深いことがありました。低血糖で疲労しきった選手に缶ジュースを1本飲んでもらうと、血糖値は急速に正常値に戻り、再び運動ができるようになったのです。自動車のエンジンは、ガソリンがなくなれば動かなくなり、ガソリンを入れれば再び動くようになります。人間の身体にも、これと同じことがあてはまるのです。 登山者の間では昔から、シャリバテという言葉がありました。シャリ(ご飯)とは、栄養素でいえば炭水化物に相当します。つまり、食事といっても特に重要なのは炭水化物で、これが不足するとバテてしまうという経験則を言っているのです。 登山者は、朝食で、炭水化物を十分に摂っておくことが必要です。そして行動中にも、炭水化物の定期的な補給が重要になるのです。
脂肪は、炭水化物と混ぜ合わせなければ燃えない
登山中の主なエネルギー源は、前述のように炭水化物と脂肪の2つです。そして、両者を混ぜ合わせて燃やし、エネルギーを生み出しています。図「エネルギー源としての炭水化物と脂肪の特性」は、その様子を概念図で示したものです。脂肪の貯蔵量は莫大なのに対し、炭水化物のそれはごくわずかしかありません。このため、両者を半々ずつ燃やしていくとすれば、炭水化物のほうが先になくなってしまいます。 ここで注意していただきたいことは、脂肪は炭水化物と混ぜ合わせなければ燃えない、という性質があることです。このため、炭水化物が枯渇した時点で、脂肪はまだ大量に残っているのに、筋を動かせなくなってしまうのです。 この性質は、ロウソクにたとえるとわかりやすいでしょう。ロウソクは、中央に糸でできた芯(炭水化物)、まわりにはロウ(脂肪)があり、その協同作業によって長時間にわたり光や熱を出し続けることができます。しかし、芯だけを燃やせばたちまち燃え尽きてしまいますし、ロウだけでは火をつけても燃えません。 このような性質を考えると、行動中は何をおいても炭水化物の補給が重要だということがわかるでしょう。炭水化物は脂肪を燃やすための燃焼促進剤のようなもので、小刻みに補給することが疲労を防ぐ になるのです。反対に、適量の炭水化物を補給し続けてやれば、きわめて長時間の歩行も可能になります。 先の記事*では、登山は体脂肪の減量に効果的だと述べました。その場合、何も食べずに歩くほうがより効果が高そうに思えるかもしれません。しかしこの図を見れば、炭水化物を補給しなければ脂肪は燃えてくれず、疲労を招くだけだということが理解できるでしょう。 *〈なんと「減量」どころか、「老化による体力低下」まで防ぐ…運動生理学で露わになった月イチ軽め登山「驚愕の運動効果」〉をご参照ください
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