知識は“美味しい”を加速させるスパイスです
この網を用いて行われる「氷見の定置網」漁は、海底に箱のようなカタチで網を沈め、回遊する魚を誘い込むという、とてもクラシックな方法です。 世の中には水中で爆弾を爆破して魚を気絶させて漁を行うといった荒々しい手法もあるようですが、この氷見の定置網は環境にも優しく(しかも迷い込んだ魚が逃げていかないよう工夫が施されている)、富山湾をいつまでも美しく保つための先代の知恵が詰まっています。
興味深いお話を伺った後は、富山の美味しい! をいただきに割烹料理・握り寿司のお店「成希(なるき)」へ。地元・氷見の食材をふんだんに使ったお料理をいただける名店ですが、今回は、店主の滝本成希さんと、出張料理人の下條貴大さんとのコラボ寿司ディナーに。 滝本さんには富山らしい昔ながらのお寿司を、下條さんは氷見の食材を生かしたモダンな一品をそれぞれ握っていただきました。ご馳走様でした!
翌日は、富山のもうひとつの名物である、白エビの漁を見せてくれるというので、早起きをして海へ。ここ数日は不漁が続いていたそうなのですが、この日は久々のヒット! で、船上で採れたての白エビをいただけるというラッキーも。実際、白エビの価格は年々高騰しており、バケツ一杯50万円の値がつくこともあるのだとか。
新湊の白エビ漁は独特のルールが採用されています。現在、全部で8隻の船がグループだそうで、とれ高は完全な分配制なのだそう。つまり、漁にでた船が不漁でも、大漁だった船があっても、8等分。理由は、過度な競争は乱獲につながるためで、未来永続的に漁を続けていくためのアイデアなのだそう。
漁の後は、これまた富山の名物「ます寿司」を自分で作るという体験の場をご用意いただいたり、富山県美術館でランチをいただいたりと、思えば食べ道楽な旅でした。富山の海が改めて豊かで美味しいが詰まっていることが理解できたと同時に、今後どうしたらこの豊かさを保っていけるのか、地元の人を中心に多くの人が知恵を絞っているということが伝わってくる富山トリップとなりました。 「寿司といえば、富山」の思いの一端を感じることが出来ましたので、次回は町寿司などにもふらりと立ち寄って、大衆の味を堪能したいと思います。今度の週末、お寿司を食べに富山へ足を伸ばしませんか?
文/堀川正毅(LEON編集長代理)