「俺らもプロに行けるかも…感覚がバグる」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大ってどんな所? 岩手の奥地「ポツンと一軒大学」を訪ねてみた!
「やっぱり監督が直接見ないとダメだと思う」
富士大では選手たちのさまざまなデータを日常的に測定し、明確な目標値を設定することで、あいまいな指導を可能なかぎり排除している。漠然と「足を速くしよう」と伝えるのではなく、「プロレベルの俊足になるために、30m走のタイムを0.1秒縮めよう」と伝える。当たり前のようだが、それを徹底するためには、指導者にも相応の知識が求められる。 加えて重要なのは、選手のリクルーティングから起用に至るまで最終的な決定権を持つ監督自身が、一気通貫で選手たちの成長に目を光らせていることだろう。話を聞くかぎり、富士大における安田の役割は、監督であり、スカウトであり、コーチであり、アナリストであり、フィジカルトレーナーであり、同時にGMでもある。「監督に見られている」という意識は、間違いなく170人を数える部員たちのモチベーションをかき立てているはずだ。 「どんなデータにしても、やっぱり監督が直接見ないとダメだと思うんですよ。だって、試合で使うのは監督じゃないですか。たとえばうちにもラプソード(弾道測定器)がありますけど、分析結果を見てアナリストが話すのと、監督が話すのとでは選手への響き方が違う。 人を挟むことによるタイムラグや誤解も防げる。僕がその数字を理解できればいい話ですから。よく『スタッフの人数が少なくて大変だね』って言われるんですけど、雪で屋外練習ができないことと一緒で、むしろ人が少ないからいいんですよね」 とにかく試行錯誤するのが楽しいんです、ホントに――そう語る青年監督の野球への情熱は、単に指導者としてのそれではなく、より当事者性が強いもののようにも感じられた。 教え子をプロにするために全力を尽くす安田の探究心の源泉は、プロを目指して挫折した過去にあった。 <次回へつづく>
(「大学野球PRESS」曹宇鉉 = 文)
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