経営危機のJ1サガン鳥栖社長が報酬月額100%返上を決めたワケ
既存の株主を中心に増資を行った結果として、J3やJFLへの降格を余儀なくされる債務超過に陥る状況は回避できた。再建を期す今年度はチーム人件費を前年度比の半分以下となる11億6900万円へ削減し、最終的に1200万円の黒字を出す予算を編成してシーズンの開幕を迎えた。 しかし、日本を含めた世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスが、サッカー界を取り巻く状況を一変させた。7億9000万円の売り上げを見込んでいたサガンの入場料収入は、竹原社長によれば「4億円から、伸びても4億5000万円にいけばいい」という状況になっている。 このまま手をこまねいていれば、今年度も億単位の赤字を計上する。さまざまな施策を打ち出したい思いを封印し、サガン・ドリームスの総意として身を削っていく覚悟を共有した上で、まずは一般販売価格で一人30万円となるサガンプラチナシートを筆頭に、合計で12種類を販売しているドリームパスポート購入者からの返答を、今月30日午後5時を期限に設定して待つことを決めた。 「次の動きはドリームパスポートの件を終わらせてからですね。ドリームパスポートを買われている方に一番負担がかかるなかで、あれもこれもというよりも、ご理解と納得を得ながらひとつずつ進めていきたい。入場料収入の売り上げが減る部分をどこかで補い、何とかやり繰りしていきながら、今シーズンに関しては何としても黒字で終わりたいと僕としては考えています」 ドリームパスポートの今後に関する案内文書を郵送したのと前後して、サガン・ドリームスの職員が総出となって購入者へ可能な限り電話をかけて、取り扱いの詳細を説明している。受話器の向こう側から聞こえてくる、ファン・サポーターの「応援しています」という声に心を震わせながら、サガンにかかわるすべての人間が思いをひとつにして未曾有の危機を乗り越えていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)