経営危機のJ1サガン鳥栖社長が報酬月額100%返上を決めたワケ
弾き出された結論は自身の報酬月額を100%、もう一人の常勤取締役である財務担当役員の谷村修三氏のそれを50%、それぞれ今月分から返上していくことだった。返金を求めないということは、イコール、ファン・サポーターが身を削ってでもサガンの役に立ちたいと判断したことになる。ならば自分も身を削らなければいけない、という覚悟と決意を竹原社長はこんな言葉に帰結させている。 「佐賀という小さな町でも、新型コロナウイルスによるダメージをみなさんが受けている。働いている方々を含めたすべてが苦労されているなかで、サガン鳥栖だけが『助けてください』と呼びかけるのはどうなのかと、ちょっと考えてしまうんですよ」 2人の報酬返上がサガン・ドリームス内で共有されてからしばらくして、竹原社長は朝礼の席で職員を前にして涙を流している。職員の有志一同から提出された文書には、26人を数える全職員の名前に捺印され、報酬の5%から10%を返上する意向が綴られていたからだ。 「僕は感情が表に出やすいタイプですけど、それでも人前で泣くことはそれほど多くはないんですね。ただ、あのときだけは経営者として申し訳ない気持ちになったというか、本来であれば僕が守ってあげなければいけない、家族とも呼ぶべき職員の方々から、新型コロナウイルス禍にあると言ってもそのような申し出を受けて、気がついたときには自然と涙があふれてきていました。ファン・サポーターの方々にそのような選択をお願いするのならば、職員として頭を下げたいと言われた瞬間に感謝の気持ちも混じって、何とも言えない涙になってしまったと説明すればいいんでしょうか」 前述したようにサガンは昨年度決算で、Jリーグ史上におけるワーストとなる20億円を超える巨額赤字を計上してサッカー界を驚かせた。株式会社Cygamesをはじめとするスポンサー企業の撤退が相次ぎ、収入が激減したなかで高騰していたチーム人件費が微減にとどまったことが要因だった。