マスコミは「本離れ」と叫ぶが…じつは今の小学生が一か月に読む本の「平均冊数」が「凄い数字」になっていた
子どもの読書の充実は、現場の努力に寄りかかって成り立っている
もっとも、筆者は現状に問題がないと言いたいわけではない。国や自治体が十分な人員や予算を付けないまま、子どもの読書に携わる現場の人間の善意と努力に寄りかかることで、こうした達成を果たしてきた点に大きな課題がある。 たとえば学校図書館はこの四半世紀で調べ学習、探究学習対応、GIGAスクール対応等々、かつてより仕事が増え、業務が多様化したにもかかわらず、学校司書は非正規雇用で複数校兼務であることが少なくない(詳しくは日本図書館協会サイト内「非正規雇用職員に関する委員会」参照)。 学校司書が文科省や勤務校の教員から求められる仕事を果たせるように複数校兼務ではなく専任で勤務でき、業務内容に見合った正当な給与と雇用の安定を実現できれば、今より充実した子どもの読書環境につながるだろう。 学校図書館の予算は、通常は自治体の役所の学校教育課が案を策定し、教育委員会内で調整、その後、財政課と折衝し、議会の承認を得るといったプロセスを経ておおよそ決まっていく。しかし、首長や議員が関心を持てば財政課も予算を確保するように積極的に動く。そのためには市民が政治に働きかけるのが一番効く。 国によっては、子どもの読書は不振の傾向にある。日本の今の良い状態も、けっして自動的にこうなったわけではない。予算や人員、ノウハウが不足すればいつでも逆戻りしかねないのである。そうならないようにできるかどうかは、われわれひとりひとりにかかっている。
飯田 一史(ライター)