マスコミは「本離れ」と叫ぶが…じつは今の小学生が一か月に読む本の「平均冊数」が「凄い数字」になっていた
小中高生の読書実態を定点的に調査している全国学校図書館協議会「学校読書調査」2024年版が発表された。小学生の書籍の月間平均読書冊数は13.8冊と史上最高を更新した。私が『「若者の読書離れ」というウソ』という本を出版して以降は多少、誤解がとけてきたが「子ども・若者の本離れ」という半世紀以上くりかえされている言説は、この四半世紀に関して言えば間違っている。学校読書調査の詳細を掲載した「学校図書館」2024年11月号を元に、子ども・若者の読書の現在について見ていこう。 【写真】今の小学生が一か月に読む本の「平均冊数」
雑誌は過去最低を更新、書籍は小学生が過去最高を更新
まずは月の平均読書冊数と不読率(月に1冊も読まないと答えた0冊回答者の割合)からだ。 雑誌は小学生2.8冊、中学生2.5冊、高校生1.2冊。 不読率は小学生62.4%、中学生65.3%、高校生76.7%。 小中高いずれでも不読率が過去最高を更新した。筆者が学校図書館の司書から中高生の雑誌読書について聞いたり、大学生から直接聞いたりしてもほぼ「読まない」であり、「雑誌は推しが載っているときしか見ない」などと返ってくるのがせいぜいである。雑誌離れはまったく止まっていない。 では書籍の読書はどうか。 書籍は小学生13.8冊、中学生4.1冊、高校生1.7冊。 不読率は小学生8.5%、中学生23.4%、高校生48.3%。 小学生が月に13.8冊というのは調査史上最高だ。不読率は小中高いずれも前年比で微増だが、長期トレンドで見れば1990年代までと比べて2000年代以降は不読率は低水準である(つまり本を読む子どもの割合はかつてより多い)。 一般的にマスメディアなどが「本離れ」「読書離れ」と言うときには「書籍の読書」を指すことが多く、その慣習を踏まえるならば子どもの読書離れは起こっていない。雑誌は読まれなくなったが、書籍の読書は改善されている。
「本を読むことが好き」と答えた小中高生の割合も過去最高
今回の学校読書調査では「本を読むことが好きか」についても訪ねている。 小学生は好き/大好き44.0%、どちらかといえば好き46.4%、どちらかといえばきらい14.8%、きらい/大嫌い3.9%、無効・不明1.0%。 中学生は好き/大好き32.9%、どちらかといえば好き40.6%、どちらかといえばきらい18.3%、きらい/大嫌い8.1%、無効・不明0.1%。 高学生は好き/大好き31.1%、どちらかといえば好き41.9%、どちらかといえばきらい19.2%、きらい/大嫌い7.7%、無効・不明0.1%。 読書は好きだと答える小中高生のほうが多数派である。2001年、2009年にも同様の調査をしているが、今回の調査がもっとも読書に好意的な子どもの割合が多くなっている。 筆者が田舎の公立中学校に通っていたころ(1990年代)には学校の昼休みなどにマンガ以外の本を読んでいると「ヤバいやつ」「え、あいつ本読んでるの?」扱いされていたが(もっとも、それが全国的に似たような感じだったかはわからないものの)、完全に時代が変わったなという印象を受ける。 なぜ書籍の読書状況が改善され、読書に対して好感を持つ小中高生が増えたかと言えば、1990年代以来、官民を問わず読書推進施策、政策、運動を粘り強く、国家規模で展開してきた成果である(くわしくは拙著『いま、子どもの本が売れる理由』参照)。