同性婚カップル「法律の後ろ盾がない中での子育ては手探りばかり」…違憲判決に「色々な家族を受け止めてくれた」
提訴から5年半の時を経て、30日に言い渡された東京高裁判決は、同性間の結婚を認めない民法などの規定を「憲法違反」と断じた。原告らは「色々な家族がいることを司法が受け止めてくれた」と歓喜に沸いた。(徳山喜翔、杉本和真) 【図表】さっと分かる...同性婚を認めない規定が憲法の各条項に違反するかの判断
「婚姻の平等へさらに前進!」。30日午前10時半過ぎ、東京・霞が関の高裁前。原告らが横断幕を掲げると、支援者らから「おめでとう」と大きな拍手が送られた。
原告の一人で、東京都世田谷区で暮らす50歳代の小野春さん(仮名)は約20年間、同性パートナーの西川麻実さん(同)と共に、それぞれが元夫と授かった3人の子どもを育ててきた。休日には子どものサッカー練習に付き添い、誕生日にはディズニーランドに出かけた。「家族の中身は元夫の時と何も変わらなかった」
だが、自身が産んだ次男が病気になった時、パートナーによる入院手続きを病院から断られた。「実態は親子なのに、戸籍上は他人。公的証明がなければ家族は守れない」と痛感した。
今回、高裁判決が言い渡された「東京1次訴訟」は2019年2月に提起された。22年11月の1審・東京地裁判決は「同性愛者が家族になるための法制度が存在しないことは憲法に違反する状態」とまでは認定した。ただ、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」とする憲法24条1項を「異性間の婚姻を指す」と解釈するなどし、「違憲」の壁は乗り越えなかった。
これに対し、高裁判決は憲法制定時、婚姻は男女間で行われることが前提で、同性婚の可否が議論にならなかった点を重視。異性間の「夫婦」が血縁関係のない子どもを共に育てているケースにも触れ、同性か異性かで婚姻の可否を区別することに合理的な根拠はないと結論づけた。
高裁判決は小野さんと西川さんについて、「婚姻関係にある夫婦と異ならない共同生活を営んできた」と触れた。法廷で次男と一緒に言い渡しを聞いた小野さんは判決後の記者会見で、「法律の後ろ盾がない中での子育ては手探りばかりだったが、色々な家族がいるとの思いが裁判所に届いてくれて胸がいっぱい」と涙を流した。