”大物OB”がOP戦5連敗の巨人に警告「このままなら最下位だ」
「今日はコントロール、キレのすべてが悪かった。だが、最初のオープン戦登板で見せた内容は評価できる。体も絞れているように思える。ストレートも150キロは出ていた。“もう菅野は落ちた“とは思わない。切り替えができるクレバーさがあり、ゲームを作る投球術を持っているのだから、コンディションさえ1年間整えることができれば結果を出すだろう」 “大御所“が「心配ない」と太鼓判を押す根拠は、2回を投げて2安打4三振無失点に抑えた5日の”BIGBOSS”新庄率いる日ハムとのオープン戦初戦の内容。11日は、左打者へのスライダーの新軌道を試していたが、変化球のバリエーションより、ストレートが最速152キロを計測するなど、ベースの部分の調整が進んでいることを評価した。 だが、こうも言う。 「ただ菅野がこけたら、今年の巨人は終わりだ。先発に菅野と双璧となれるもう1枚がいない。成長が期待された戸郷や高橋はどこにいるのか?」 練習試合で結果を出せなかった昨季11勝でチームの勝ち頭の左腕、高橋優と、昨季9勝の戸郷は2軍調整を命じられている。現段階で菅野に次ぐローテー候補は、山口俊、メルセデスの2人くらい。原監督は、今日12日にオープン戦2度目の先発機会を与える2年目の山崎、支配下登録した堀田、日大出身のドラフト3位ルーキー赤星らの若手のローテー入りを試しているが、まだ戦力としては不透明。 セットアッパー候補としては、独特の腕の位置から150キロ超えのストレートを連発するドラフト1位の大勢が存在感を示し、この日も8回に登板して無死三塁のピンチを作りながらも無失点に切り抜けた。広岡氏も「まだ数試合で判断はできないが、投手が成功するために最も必要なボールの速さを持っている。素材はいい」と称賛。高梨、畠、高木の3投手も無失点リレーするなどしたが、中川、鍵谷らの調整が遅れている。 さらに深刻なのは打線だ。
オリックスの沢村賞投手に牛耳られた。1回二死満塁の先制チャンスを作るが、約20キロ増量、打撃フォームを大胆に改造して9試合連続ヒット中だった中田のバットが空を切った。三球三振で最後は154キロのストレート。3回にも二死一、二塁で中田に回ってきたが、今度はボール球のフォークボールに手を出して、また三球三振。山本の降板後に、大城が、ベテランの能見から逆方向に一発を放り込んだが、チームの得点はこれだけ。11安打を奪いながらも13残塁でタイムリーが出ない。ここまで9試合を戦ってチーム打率.187は12球団最低で、チーム得点も10位。いくらオープン戦とはいえど深刻だ。 広岡氏は、「岡本の前後が打たないと得点力が生まれない。打線を全体的に見て、ボールにタイミングを合わせることばかりに終始しているように映る。タイミングの前に迎える準備が重要。そこができていない。キャンプからの練習が足りないのだ」と分析した。 さらに大御所が指摘するのは「野球に動きがないこと」だ。 「機動力が使えていないし、使おうという意思が見えない。ヤクルト、阪神という去年優勝争いしたチームは機動力が使えている。阪神で言えば近本、中野、ヤクルトでは塩見といった嫌らしい打者がいる。では、巨人はどうか。今日先発したメンバーでいえば、吉川、立岡、松原は、嫌らしい打者でなければならない。バント、エンドランなどの小技ができる、走者に出せば走ってくるという嫌らしい存在でなければならないが、現状は、相手バッテリーからすれば、安パイ。つまりキャンプからコーチがそういう教えを徹底していないということ。チームとして目的を持った練習ができていないのだ」 2番候補の吉川は打率.160、原監督から「オープン戦から結果を出せ」とプレッシャーをかけられている松原も打率.167と低迷している。本来ならば丸1番構想に挑戦状を叩きつけるほどの結果を出さねばならない立場にあるが、丸の方が結果を出している。 若手の台頭もなく、7回二死一塁で代打出場した2年目の大型野手である秋広が投手強襲のヒットを打ったが、これがオープン戦8戦目にしての初ヒットである。 「素材のある若手が何人もいるのにもったいない」と広岡氏も嘆く。 ただ、投打に現状打破の切り札は用意されている。すでに来日している新外国人だ。打者では、メジャー通算8年で96発&98盗塁をマークしているポランコ。練習の段階でパワーを披露しており、課題の5番打者としての期待が高まっている。一方の投手陣では、先発候補として、メジャー通算46勝で、8年前には16勝4敗でア・リーグ最高勝率を獲得した35歳のシューメーカーが合流した。 だが、広岡氏は、一刀両断。 「外国人は計算できないし、計算してはいけない。米国でミニキャンプを張らせていたようだが、あてにはならない。まだ何もしていない戦力に期待をかけなければならないのは、そもそものチーム編成がうまくいっていない証拠。あくまでも、そこはプラスアルファで、新戦力を頼りにしなくとも大丈夫な状況をキャンプからチームを鍛えあげて作っておかねばならない」 オープン戦は残り8試合。 「あと2週間でどこまで仕上げることができるのか。まず監督、コーチが危機感を持つこと」 広岡氏は、そう檄を飛ばす。 体調不良でベンチにいなかった原監督は大先輩の辛辣な意見をどう受け止めるのか。25日からの開幕カードの相手は打倒巨人に燃える立浪ドラゴンズである。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)