三井物産サラリーマンから落語家へ転身 立川志の春の仕事論 「落語はビジネスに役立つのか?」にアンチな理由とは
江戸時代から続く歴史があり、人間力や教養が高まるとビジネスリーダーから好まれている落語。その特性とビジネススキルを掛け合わせ、落語を聴くようにすんなり理解できる「落語家に学ぶ仕事のヒント」。 「職場で生かせるビジネスハック」「スキルアップのヒント」「キャリアの視座を高めるコツ」をさまざまな人気落語家へのインタビューから探ります。 今回お届けするのは、新卒で三井物産に入社した3年半後、運命に導かれるように落語の道に入った立川志の春さんのスペシャルインタビュー。 ところが「落語はビジネスに役立つのか?」という質問に対し、志の春さんから返ってきたのは「その考え方は好きじゃない」という身もふたもない答え。 のっけから不穏な空気が漂い、開始前からシリーズの存続が危ぶまれる取材となりましたが、終えてみれば、やはりビジネスパーソンが落語及び落語家から学べることは大いにありました。
【立川志の春 SHINOHATU TATEKAWA】 落語家 1978、大阪府豊中生まれ。千葉県柏市で育つ。幼少時と大学時代の計7年ほどをアメリカで過ごした。 アメリカのイェール大学を卒業後、三井物産に3年半勤務。偶然通りかかり始めたきいた落語に衝撃を受け、2002年、三井物産を退社し、立川志の輔に入門。 2011年1月二ツ目昇進、2020年4月真打昇進。 古典、新作、英語、シェイクスピア、人物伝、下ネタなど、様々な落語に挑戦中。
「落語をビジネスに生かす」のわな
今日の取材のテーマは「落語はビジネスに役立つのか?」ですが、実のところ、私は落語をビジネスに生かすという考え方にはアンチの立場です。なぜなら、落語の聴き方を固定化することにつながってしまうから。 落語の味わい方は人それぞれです。 例えば、寄席でケタケタ笑っている初めて落語を聴いた人に対して、「そこは笑うところじゃねぇぞ」と落語通の人がギロッとした視線を向けてしまうことがある。 落語通の人は同じ話を100回ぐらい聴いているから、「この演者はこの話をこうやって調理するんだな」という視点での笑いどころがあるわけです。 一方、初めて落語を聴いた人はストーリーを新鮮に味わっているわけで、両者の笑いどころにズレが生じるのは当たり前ですよね。