米紙ワシントン・ポスト漫画家が抗議の辞職 社主ベゾス氏を風刺した作品が掲載拒否され
米紙ワシントン・ポストの漫画家で、報道界の権威あるピュリツァー賞を受けたこともあるアン・テルネス氏が、同紙オーナーで大富豪のジェフ・ベゾス氏を風刺した作品の掲載を拒否され、同紙を辞職した。 問題となった作品は、ベゾス氏や、メタ創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、オープンAIのサム・アルトマン氏が、ドナルド・トランプ次期大統領の像の前でひざまずき、現金が入った袋を渡そうとしている姿を描いたもの。 作品の中では、ミッキーマウスも像の足元にひれ伏している。ディズニーが所有するABCニュースは先月、トランプ氏が起こした名誉毀損訴訟で、1500万ドル(約23億円)を支払って和解することに合意した。 ワシントン・ポストは、この漫画の掲載見送りを決定。論説面のデイヴィッド・シプリー編集長は、掲載予定となっている別の作品との重複を避けるためであり、同紙オーナーを嘲笑していることが理由ではないとBBCに話した。 テルネス氏は3日、コンテンツプラットフォーム「サブスタック」への投稿で辞意を表明。ワシントン・ポストでは2008年から働いてきたとし、「その間、私のペンの対象が誰だろうと、何だろうと、それを理由に漫画がボツにされたことは一度もなかった。今までは」と書いた。 そして、「ボツにされた漫画は、トランプ次期大統領の機嫌を取るために全力を尽くしている億万長者のハイテク企業やメディア企業の最高経営責任者を批判したもの」だと説明。「自分たちにとって大きいもうけにつながる政府契約や規制撤廃に関心がある、こうした人たち」への風刺だとした。 そのうえで、同紙がこの漫画の掲載を拒んだことは、状況を一変させる「ゲームチェンジャー」で、「報道の自由にとって危険だ」と記した。 一方、シプリー編集長は声明で、「私はアン・テルネスと、彼女が『ポスト』に提供してきたすべてを尊重している。しかし、彼女の解釈には同意できない」、「すべての編集判断に悪意ある力が反映されているわけではない」とした。 そして、「私の判断は、この漫画と同じテーマのコラムを掲載したばかりで、すでに別のコラム(風刺もの)の掲載を予定していたことによっている」と付け加えた。 ワシントン・ポストがテルネス氏の漫画をボツにしたことは過去にもあった。 2015年には、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)の若い娘たちをサルに見立てた作品の掲載を取りやめた。 同紙は当時、子どもは「蚊帳の外」に置くのが編集方針だと説明した。 ■ベゾス氏とトランプ氏の関係 ベゾス氏は先月、自らが創業したアマゾンがトランプ氏の就任基金に100万ドルを寄付し、さらに100万ドル相当の現物寄付をすると発表した。 ベゾス氏はまた、トランプ氏の再選を「並外れた政治的復活」と評価。フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅マール・ア・ラーゴで同氏と食事をした。 昨年11月の大統領選の数週間前には、ワシントン・ポストとしてカマラ・ハリス副大統領への支持を表明するのを阻止しようと介入。同紙はリベラル派から批判された。 ベゾス氏は自らのこの対応を正当だと主張したが、同紙は影響で購読者25万人以上を失ったとしている。 ロサンゼルス・タイムズでも同様の動きがあり、10月にハリス氏支持を表明しないと発表した。同紙のオーナーのパトリック・スン・シオン氏も、今回ボツになった漫画に描かれていた。 (英語記事 Washington Post cartoonist quits after Bezos satire is rejected)
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