効率化の行き着く先は「死」 サバイバル登山家・服部文祥さん 山や廃村での不便さに見いだす生きる意味
「足るを知る」
5年前、北関東の廃村で明治時代に造られた空き家を購入しました。沢水を引き、まきを拾い、鹿を狩り、野菜も作っています。サバイバル登山から行き着いた基礎的生活。面倒くさくて「スイッチ一つで沸く風呂に入りたい」と放り出したくなることもあります。でも、そこに自分で生きている実感がある。 「足るを知る」という言葉がありますが、もう私たちは十分豊かです。エネルギーを消費する経済活動や好景気を維持することと、環境への負担を減らす持続可能な消費生活は両立できません。物質的に豊かであることが幸せ―。そんな価値観を根本的に見直す時だと思います。〈山ろく清談〉 ◇ 服部文祥(はっとり・ぶんしょう) 横浜市生まれ。登山家、作家。大学時代に登山を始め、世界2位の高峰K2登頂などを経てサバイバル登山を始める。2016年、ノンフィクション「ツンドラ・サバイバル」で梅棹忠夫・山と探検文学賞。著書に「サバイバル登山家」「お金に頼らず生きたい君へ」など。54歳。松本市の上高地で。