名スカウトが総括。昨季ドラフトの成功と失敗
プロ野球のドラフト会議が25日に迫ってきた。競合必至の大阪桐蔭の“二刀流”根尾昂や夏の甲子園準Vで時の人となった金足農の吉田輝星ら行方の気になる選手が多い。そのビッグイベントを前に昨年のドラフトの成否を振り返ってみたい。 昨年は、清宮幸太郎(早実)一色。阪神、巨人、ヤクルト、ソフトバンク、楽天、日ハム、ロッテの7球団が競合して日ハムが獲得、甲子園で清原和博の持つ大会最多本塁打記録を更新した中村奨成(広陵)に中日と広島が競合、即戦力左腕の田嶋大樹(JR東日本)にも西武とオリックスが競合した。外れ1位で安田尚憲(履正社)、村上宗隆(九州学院)の2人が重複したが、一本釣りに成功したのは、横浜DeNAの東克樹(立命大)だけだった。 ヤクルトで30年以上スカウトを務め、古田敦也氏や宮本慎也氏らを発掘した片岡宏雄氏に独断と偏見で「ABC」評価をしてもらった。 「全般的に見てチーム貢献できた即戦力選手の数では不作。新人王争いが盛り上がらなかったのが、その象徴。ABCの評価に分けてみたが、正直、A評価は横浜DeNAだけ。中日、オリックスは、A´といったところ。また清宮を引き当てた日ハムに加え、広島、ヤクルト、ロッテの1位も2、3年後を見据えた大型の高校生野手だったので、今年の1軍の成績だけで、昨年のドラフトの成否を評価することは本当の成否ではないことは理解してもらいたい」 片岡氏は、昨年のドラフト直後には「成功は、日ハム、中日、オリ。失敗は偏向巨人」と採点していた。 1シーズンが終わって片岡氏が「A」グループに入れたのは、横浜DeNA、中日、オリックスの3球団だ。 いずれも即戦力が活躍した。横浜DeNAは単独1位指名した左腕の東が11勝5敗、巨人の菅野智之に次ぐ防御率2.45をマークした。今永昇太、濱口遥大という先輩左腕が、不調や故障で勝ち星を伸ばせない中、東の存在感が光った。 高田繁GMが、チームに足りなかった機動力を使える選手を意図的に補強した2位の神里和毅外野手(日本生命)も開幕スタメンに抜擢され、8月に死球を右足甲に受けて骨折離脱するまで主に1番打者として86試合に出場、打率.251、5本塁打、21打点の成績。6月9日の交流戦の日ハム戦では沖縄から招いた両親の前で4打数4安打に決勝タイムリーでお立ち台に上がった。8位の楠本泰史外野手(東北福祉大)も56試合に出場している。 中日は1位の鈴木博志(ヤマハ)が150キロ超えのストレートを連発。スタートはセットアッパーとして起用され、チーム事情で途中からストッパーも任された。 「東はコントロールの良さは際立っていたが、ここまでやるとは思っていなかった。先発2試合目の巨人戦に勝ち、続けて次も巨人に2勝目。うまく滑り出して自信をつけた。ベンチの起用法のおかげ。7月にくたびれたが、最後まで投げきった。プロの体力があったね。思い切りの良さと、コントロールに尽きる。実は、本当の投手のセンスとは、この部分なのだ。 対照的に鈴木は酷使されてへばった。いくらノンプロとはいえ53試合も投げるのは酷。休ませながら余裕を持って起用されていたなら東と新人王を争う結果を残したかも」 オリックスが西武との競合で引き当てた左腕の田嶋は6月までで6勝のペースだったが、故障離脱。3位の福田周平(NTT東日本)は主に二塁手として113試合に出場、打率.264、16盗塁でほぼレギュラーを獲得した。 「田嶋はアクセントがもう少し必要だと見ていた。ふた回り以降の対戦に注目していたが故障が残念」