名スカウトが総括。昨季ドラフトの成功と失敗
清宮は王貞治氏の1年目に重なる
「B」グループは、巨人、ロッテの2球団。「B´」グループとしてソフトバンク、日ハム、ヤクルトの3球団が入った。 「巨人は1位の鍬原拓也(中央大)がわずか1勝。私はまだ未完成で1位ではしんどい選手と見ていたが、計算外れに終わった。だが、大城は勝負強さを見せ、50試合以上にマスクもかぶった。田中も終盤は、ほぼレギュラー扱い。不安だった野手層をドラフトで厚くした。私は、巨人の偏向ドラフトを評価しなかったし、肝心の投手が戦力とならなかったのだから成功とは言えないが、編成の狙いの半分は当たったのではないか。 ロッテの藤岡は、昨年の西武の源田に比べると、守備、打撃共にスケールがひとつ小さいが、シーズンをやりきったことは評価していい。ただ打率がこの程度なら、もっと守りを完璧にしなければならないし、逆に守りが、この程度ならもっと打たないと定位置をずっとは確保できない。1位の安田が最後に1軍経験を積ませてもらい片鱗は見せた。2軍でも100試合以上出場しているし、来年以降への期待が膨らむ」 巨人は2位、3位で即戦力の捕手を2人指名。3位の大城卓三(NTT西日本)の方が83試合、打率.265、4本、17打点。6月10日の西武戦では、球団初となる新人代打サヨナラヒットを放っている。広島の田中広輔の実弟である田中俊太(日立製作所)は5位指名だったが、99試合に抜擢された。 ロッテも新人野手が戦力に。開幕スタメンのショートに2位の藤岡裕大(トヨタ自動車)、レフトに4位の菅野剛士(日立製作所)の2人が抜擢され、藤岡は143試合に出場、打率.230、5本塁打、42打点の結果を出した。 また1位の安田は、ファームで102試合、打率.271、12本塁打、67打点。10月2日のソフトバンク戦で東浜巨からプロ初ホームランを放っている。 「注目の清宮は、優勝争いに参加したチーム事情を考えると、1軍で我慢起用されなかったのは仕方がない。古い話で恐縮だが、王貞治氏の1年目に重なる。王氏もインサイドと変化球に苦しんで崩されたが、2年目から徐々に克服して4年目にブレイクした。巨人の岡本も、4年目の今季、3割、30本、100打点をクリアしたが、清宮は、もっと早く出てくるだろう。守るところが一塁しかないのが難点だが。 ソフトバンクは、育成の左腕の大竹が夏場以降チームを助けた。情報社会となり各球団の選手評価が横並びになる中、こういう選手の台頭がスカウト冥利に尽きるのだ。ヤクルトは苦しい投手陣の中、2位の大下佑馬(三菱重工広島)が少し役に立った。ノンプロの出来上がった選手は、あれくらいはできる。むしろシーズン最後に出てきた1位の村上に風格を感じた」 清宮は、5月2日の楽天戦で「6番・DH」でスタメンデビューすると、7試合連続安打の新人デビュー記録を作ったが、途中、2軍落ちを味わうなど、最終的には、53試合、打率.200、7本塁打、18打点に終わった。 片岡氏が比較した王貞治氏の1年目の成績は、94試合、打率.161、7本塁打、25打点。本塁打タイトルを獲得したのは4年目。東大左腕の7位の宮台康平は8月23日のソフトバンク戦で先発抜擢を受けて5回途中まで2失点でゲームを作ったが、1軍登板は、この1試合だけだった。 ソフトバンクの大竹耕太郎は、早大から育成4位で入団した軟投派の左腕。7月末に支配下登録され、8月1日の西武戦で、8回2失点で、初先発、初勝利。育成出身選手として史上初の快挙だった。 片岡氏の古巣ヤクルトの1位・村上も「清宮以上」と評価されていた打棒の片鱗を見せた。ファームでは98試合、打率288、17本塁打、70打点、出塁率389はイースタントップ。9月16日の広島戦で岡田明丈から史上65人目となるプロ初打席初本塁打をマークしている。