長浜のアメフト文化守る…虎姫高継ぐクラブチーム昨年誕生
部員数の減少から存続が危ぶまれる滋賀県長浜市の県立虎姫高アメリカンフットボール部の顧問を中心にクラブチーム「クロスタイガー」が昨年誕生した。部員の練習環境を確保するとともに、長浜に根付くアメフト文化を守っていこうと結成され、現在、同校と県立長浜農業高の生徒計4人が所属して、練習に汗を流している。(清家俊生)
長浜市では1950年代に市立南中学にアメフトからタックルなどを除いたタッチフットボール部が創設された。それ以降、市内の中学や高校にアメフト部がつくられ、全県に広がった。全国でも屈指のアメフトが盛んな地域として知られ、かつてはアメフト部を持つ高校が県内に10校以上あった。しかし少子化やコロナ禍などを経て、現在、単独で大会に出場できるのは長浜北と立命館守山の2校だけとなった。 虎姫高は1959年創部の古豪で、愛称は「田舎の虎」を意味する「ヨーケルタイガー」。県大会優勝の実績もあり、日本代表に選ばれたOBもいる。だが、2020年頃から部員が減少。他校との合同チームで大会に出場していたが、昨年はそれもかなわず、廃部する可能性も出ている。 こうした中、顧問の矢盛琢磨教諭(38)が「子どもたちに試合をさせてあげたい」と発起した。長浜市出身で立命館大でプレーし、アメフトの日本選手権「ライスボウル」にも出場、日本一を経験している。 矢盛さんは大学の先輩らと県内の企業などを回り、支援を依頼。賛同企業も現れ、昨年3月、虎姫高アメフト部を引き継ぐクラブチーム「クロスタイガー」を発足させた。チーム代表も務め、「チーム名には、虎姫の伝統に他校の魂を掛け合わせる(クロス)思いを込めた」と話す。 現在、虎姫高アメフト部3人と長浜農業高1人の計4人がクラブに所属し、滋賀大アメフト部や県内外のクラブチームと合同で試合に出たり、虎姫高OBと練習したりしている。当面は試合ができる11人の選手確保が目標で、アメフトの試合会場でチラシを配ったり、SNSでPRしたりして選手を募っている。 長浜農2年生(17)は中学でもアメフト部に所属。同校アメフト部に入ったが、上級生の引退で部員が1人となりサッカー部に移籍した。夏休み前、中学の顧問から「虎姫にクラブチームができたぞ」と紹介され、サッカー部を辞めてクラブの門をたたいた。「またアメフトができるなんて、うれしかった」と喜ぶ。 虎姫高アメフト部主将の2年生(17)は祖父、父と3代、同部でプレー。「小さい頃から憧れた虎姫高アメフト部ではなくなるが、人と人とのつながりを大切にし、これからもプレーしていきたい」と意気込んでいる。 かつて長浜には中学でアメフトを始め、高校のアメフト部に入る流れがあったという。そこから大学、社会人で活躍する多くの選手を輩出してきた。 矢盛さんはもう一度、長浜からアメフトの裾野が広がることを願う。「将来は小学生や中学生のフラッグフットやタッチフットもできる総合的なクラブチームを目指したい。滋賀のアメフトに恩返しできれば」