それなりの年齢でも夫が「自分の価値観」を見直した方がいい理由…妻の“押してはいけないスイッチ”に注意(レビュー)
それなりの年齢になれば、良くも悪くも自分の価値観を持っているものだ。それをベースに様々な判断を下しながら今を生きている。 とはいえ、範囲を家庭内に限ると、その価値観や物事の判断基準を検証してみたほうがいいかもしれない。特に妻に対する夫の言動は、自ら墓穴を掘ったり、いらぬ紛争を引き起こしたりする可能性が高いからだ。
石原壮一郎『押してはいけない 妻のスイッチ』は、そんな夫たちのための指南書である。たとえば、妻が懸案事項を相談しようとした時、「えー、またその話?」と言ってしまう夫。その無責任ぶりが妻を幻滅させると著者は言う。 また、掃除をしている妻に「少しは手伝ってよ」と言われ、「何をすればいいの?」と返事をする。そこには「掃除は妻の仕事だけど、手伝ってあげてもいいよ」という思いが透けて見え、無用な炎上を招くのだ。 さらに、便宜的なだけの〈相づち〉も危険なスイッチだ。本当はわかっていないのに「わかるよ」。マウントを取るかのような「たしかに」。無意識で口にしてしまうが、確実に妻をイライラさせている。同様に「そんなの聞いてないよ」や、「だってしょうがないだろ」といった〈言い訳〉も夫の株を暴落させる。 触れてはいけないものに触れることを「地雷を踏む」という。地雷は見えない。だから危険だ。しかし、スイッチは見えている。押さなければいいのだ。妻のストレス軽減は、夫の幸福に直結すると心得たい。 [レビュアー]碓井広義(メディア文化評論家) 1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年にわたりドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。著書に「少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉」(新潮社)、「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」(同)、「ドラマへの遺言」(同)ほか。毎日新聞、北海道新聞、日刊ゲンダイなどで放送時評やコラムを連載中。[公式サイト]碓井広義ブログ 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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